就職・転職活動で必要になる「履歴書」。障害者雇用の履歴書は一般雇用との大きな違いはなく、記載する内容もほぼ同じです。
唯一違うのが、障害者手帳の情報を記載すること。健康状態や本人希望記入欄の項目を使い、手帳の種類や等級などを記載しましょう。
障害者雇用では手帳があることを明示しよう!
本記事では履歴書の書き方と注意点を、障害者雇用向けに詳しく解説しています。
- 手書き・パソコンで作る履歴書のポイント
- 履歴書の各項目の書き方
- 履歴書作成時の注意点
「履歴書が正しく書けているか不安!」という方は、本記事をぜひ最後までお読みください。
障害者雇用における履歴書の役割
履歴書は就職・転職活動における必須書類。採用担当者が応募者の経歴やスキルを評価するため、正しく記載する必要があります。
企業にとって履歴書は、応募者の学歴や職歴、取得資格、志望動機のほか、希望する勤務形態や就業場所といった基本情報を確認するための書類となります。
引用:マイナビエージェント
障害者雇用では職歴や資格などの一般的な項目のほか、障害者手帳の有無や等級も合わせて記載してください。
職務経歴や具体的な自己PRは履歴書で網羅せず、職務経歴書でアピールしてください。
また障害への配慮事項については、別途書類を作成し提出すると分かりやすいでしょう。
履歴書と他の書類の違いについては、後半で説明しています。
履歴書は自分の経歴や基本情報を簡潔に伝える書類!
履歴書は手書きよりパソコン作成がオススメ
履歴書は既製品に手書きするほか、パソコンでExcelなどを使い作成してもOK。「履歴書は手書きの方が熱意が伝わる!」と指導する方もいますが、筆者は圧倒的にパソコン作成をオススメします。
- 複製やデータ保存がしやすく紛失しにくい
- コピーしなくてもスマホから見返せる
- 誤字脱字やミスがあっても書き直しが簡単
私自身、転職活動ではスプレッドシートで履歴書を作ったよ!
履歴書のテンプレートはハローワークのウェブサイトや、転職エージェントのdodaチャレンジなどで無料配布しています。
障害のある方の中には手書きが難しい方や、ケアレスミスなどで履歴書作成が進まないと悩む方もいるでしょう。
パソコン作成なら一度ベースとなる書類を作れば、応募時は変更点の修正だけ。文章の修正や書き直しも手軽にできます。
履歴書の手書きとパソコン、それぞれ作成時のポイントを紹介します。
パソコンで履歴書を作るポイント
パソコンで履歴書を作る際は、以下のポイントに注意してください。
- 印刷時A3サイズに調整してから作成
- 読みやすい標準的なフォントを使う
- 太字・赤文字などで装飾しない
履歴書データはA3サイズで印刷できるように大きさを調整し、二つ折りにしてから提出しましょう。市販の履歴書もA3サイズの二つ折りが多いため、変に差別化せず合わせる方が無難です。
履歴書の文字フォントは凝ったものを使用せず、標準的な読みやすい書体を使いましょう。Windowsなら「MS明朝」、Macなら「ヒラギノ明朝」がオススメです。
履歴書もビジネス文書の一部。余計な手を加えることで、返って悪印象となる可能性もあります。重要なポイントを目立たせたいからと、太文字や赤文字で装飾することも避けてください。
手書きで履歴書を作るポイント
手書きで履歴書を作成する場合は、以下のポイントに注意しましょう。
- 採用担当者が読みやすい文字で書く
- 書類の汚れや誤字・脱字に気を付ける
- 書き損じに修正液や修正テープの使用はNG
手書きの場合はパソコン作成よりも、文字そのものの書き方に注意が必要です。雑に潰した文字や走り書きをせず、丁寧に書き上げてください。
もし書き損じてしまった際は、修正液や修正テープを使わず最初から書き直しましょう。
書き損じたときのロスを考えたら、パソコン作成の方が圧倒的に楽!
履歴書の書き方を項目ごとに解説
履歴書の書き方を、項目ごとに分けて解説していきます。履歴書の項目は余計なことを書かず、事実のみを記載してください。
書き損じを防ぐため、手書きの方は下書きを用意しておくといいでしょう。
履歴書の作成は集中して、ミスなく丁寧に!
基本情報欄
基本情報欄は住所・氏名・連絡先などの個人情報を記載するスペース。連絡先には連絡のため、メールアドレスも記載することをオススメします。
メールアドレスの手書きは、似た文字の勘違いが起きやすいです。
- 数字の0(ゼロ)と英大文字のO(オー)
- 数字の9(キュウ)と英小文字のq(キュー)
- 数字の1(イチ)と英小文字のl(エル)と英大文字のI(アイ)
余計なトラブルを防ぎたい方は、Gmailなどで転職活動用のフリーアドレスを取得すると良いでしょう。
また欄外には日付を記載する箇所があるため、応募書類を提出する日付を記載してください。
日付は和暦か西暦のどちらかで統一。後述する学歴・職歴や、資格取得日なども合わせるようにしましょう。
写真
履歴書の写真は白と黒だけの履歴書で、色がついている唯一の場所。採用担当の目に止まりやすいため、写真の仕上がりは非常に大切です。
- スーツで撮影する
- 髭や眉毛、髪型などを整える
- 相応しいメイクを心がける
写真の身だしなみひとつで、書類選考に悪影響があるともったいないです。身だしなみを整えてから撮影してください。
スマホを使って自分で撮影するのもアリですが、過度な加工はNG。背景に気を付けつつ、友人や家族などに協力してもらいましょう。
写真撮影に自信がない方は、写真館で撮影してもらうのが一番です。撮影後にデータを貰える店もあり、データがあればコンビニ印刷などで使い回せます。
何社も応募を繰り返す場合、都度スピード写真で撮影するよりもトータルで割安になるでしょう。
学歴欄
学歴は後述する「職歴」と一緒の枠になっていることが多いです。一行目の中央に「学歴」と書き、二行目から学歴の内容を書いていきましょう。
一般的には高校の入学から記載しますが、転職回数が多い方は一部削ってしまってもOK。最終学歴の入学・卒業は記載してください。
大学・短期大学・専門学校などは、学校名の他に学部や学科も併記。学校の名称は正式名称で記載します。
- 高校→高等学校
- 短大→短期大学
- 専門→専門学校
職歴欄
職歴は学歴の下に記載、一行目の中央に「職歴」と書き、二行目から職歴の内容を記載してください。
履歴書に書く職歴は、社会保険に加入していた経歴が中心。アルバイトや派遣会社は省略してもOKです。
ただし面接時に空白期間について尋ねられる可能性が高いため、答えられるよう準備しておきましょう。
株式会社や合同会社などの法人格は、(株)(同)などと省略せず正式名称で書きましょう。
アルバイト・派遣・副業(業務委託)などは、応募職種へのアピールになる経歴であれば積極的に追記しましょう。就労移行支援や就労継続支援A型・B型などの通所歴も、一定のアピール材料になります。
退職歴がある人は、入社と退職をセットで記載。退職理由は具体的な内容を書かず、端的に記載してください。
- 20XX年XX月 株式会社吉田工業 入社
- 20XX年XX月 株式会社吉田工業 一身上の都合により退職
- 20XX年XX月 yoshida株式会社 入社
- 20XX年XX月 yoshida株式会社 契約期間満了につき退職
職歴が多く書ききれない場合は、入社と退職を一行にまとめることで記入できる行が増えます。
- 20XX年XX月 株式会社吉田工業 入社(20XX年XX月退職)
- 20XX年XX月 yoshida株式会社 入社(20XX年XX月退職)
どうしても入りきらない場合は、同系統の職種をひとまとめにするのも選択肢のひとつ。まとめた経歴の内訳は、必ず職務経歴書で分かるようにしましょう。
- 20XX年XX月~20XX年XX月 営業職3社(詳細は職務経歴書に記載)
- 20XX年XX月~20XX年XX月 事務職2社(詳細は職務経歴書に記載)
職歴を全て書き終わったら、項目の右下に「以上」と記載して完了です。
免許・資格欄
免許・資格欄は、自分のスキル・能力を客観的に証明できるスペース。一定以上の知識や、業務についての理解があることをアピールできます。
保有免許や資格の記載ルールはありませんが、以下のポイントを押さえると分かりやすいです。
- 運転免許を先に記載し、他の資格は後に記載
- 取得年月日は学歴・職歴と表記を統一
- 免許・資格名は省略せず正式名称を記載
多くの資格があり枠に書ききれない場合は、難易度より応募職種と関連性の高いものを記載しましょう。
危険物乙4種<Microsoft Office Specialist
関連資格を勉強中の場合は、取得予定と明記することも有効です。
- 日商簿記検定2級 取得予定
ただし勉強中と記載する場合、面接で習熟度合いや進捗などを質問される可能性が高いです。質問されたら答えられるよう、準備しておくといいでしょう。
志望動機欄
志望動機は企業に対し、志望意欲と適性を示す項目。事実のみを記載する項目が多い履歴書で、文章でアピールできる数少ないスペースです。
入社意欲を適切に伝えるため、以下のポイントを押さえて企業ごとにオリジナルな志望動機を考えましょう。
- なぜこの職種や業界なのか?
- なぜこの求人・この企業なのか?
- 入社意欲があることを明示
求人への熱意や自身の適性を短い文章にまとめ、志望動機全体で長くても300~400文字程度に仕上げましょう。
志望動機で大切なことは、「このひとは採用してもすぐに辞めないだろう」と感じてもらうことです。
志望動機の書き方については、以下の記事で詳しく説明しています。志望動機の書き方が分からない方は、ぜひこちらの記事もお読みください。
»障害者雇用の志望動機を考えるポイント3つと書けない時の対策
趣味・特技欄
趣味・特技欄は、仕事以外のご自身を表現できる項目。採用と直接関係なさそうに見えますが、以下を企業側に伝えられます。使える枠は有効活用していきましょう。
- 仕事以外にストレス発散方法がある
- 会社以外のコミュニティに属している
- 新しいことを学ぶ、知識を深めるなどの意欲がある
- 失敗や挫折を克服した経験がある
- ひとつの物事に真剣に取り組んだことがある
趣味と応募企業に関連がある、仕事内容に得意なことが活かせるなど、志望動機や自己PRに関連性を持たせるとより効果的です。
自己PR
自己PRはあなたのスキル・経験や実績が、応募企業に役立つことを証明する項目。企業側が応募者にどんな能力を求めているか見極め、貢献できることをアピールしましょう。
- 応募する職種はどんなスキルが役立つか
- 応募する求人に関連する経験・実績があるか
- 今回の求人ではどんな人を求めているか
企業側は自己PRを通して、「部署に配属したときに仕事を任せられそうか」を確認しています。
具体例も織り交ぜつつ記載し、採用担当に「活躍する姿」を想像してもらうことを意識してください。
履歴書の自己PR欄は小さい、または無い場合もあります。詳細な内容は職務経歴書に記載しましょう。
自己PR文の書き方については、以下の記事で詳しく説明しています。こちらも合わせてお読みください。
健康状態(障害内容の記載方法)
既製品の履歴書に手書きする場合、健康状態を書く項目があります。障害者雇用に応募する場合は、健康状態の項目を使って障害についての情報を記載しましょう。
- 障害の名称
- 手帳の種類と等級
- 現在の体調
障害者雇用で働く場合「障害者であること」ではなく、あくまで「障害があっても働ける状態であること」を伝えましょう。
履歴書の中は要点のみに抑え、詳細は職務経歴書に記載するか、「私の障害について」などの書類を作成すると良いでしょう。
もしパソコンで履歴書を作成する場合、欄内に手を加えて障害内容を伝えやすく作り変えるのも有効です。
通勤時間
自宅から職場までの片道の通勤時間を記載するスペース。最寄り駅からではなく、家を出てから会社に到着するまでの時間を記載するのが一般的です。
細かく書く必要はないため、5分単位の大まかな時間で問題ありません。Google Mapを使えば、自宅から会社までの時間がすぐに計算できるのでオススメです。
本人希望記入欄
特に記載することがなければ「貴社規定に準じます。」でOKです。
- 勤務日の通院配慮
- 勤務時間の調整
など、雇用形態に対して配慮が必要な場合は、簡潔に記載してください。
業務内容や指示などの配慮については別途、配慮事項をまとめた書類に記載しておくと分かりやすいです。
履歴書作成時の注意点
履歴書を作成する際の注意点を紹介します。履歴書はビジネス文書として扱われ、履歴書の仕上がり次第で「ビジネスマナーがない人」と判断される恐れがあります。
- 誤字・脱字はNG
- 書類を汚さないように注意
誤字・脱字はNG
誤字・脱字は履歴書において、絶対に避けるべきポイントです。誤字・脱字があると、注意力が足りない人という印象を与えてしまいます。
またあまりにも誤字・脱字が多いと、履歴書そのものの信頼性も低下してしまうでしょう。
誤字・脱字を防ぐには、提出前の見直しだけでなく、第三者にチェックしてもらうのも有効。転職エージェントの担当者や支援事業所のスタッフなど、信頼できる人に確認してもらってください。
Googleドキュメントの校正機能を使って、違和感のある箇所を機械的に抽出することも有効です。
書類を汚さないように注意
履歴書を含む応募書類は、提出前に汚さないよう細心の注意を払って扱うようにしてください。
テーブルや周囲に飲み物を置かないように気をつけたり、作成後にクリアファイルへ入れたりすると効果的です。
障害者雇用で必要な3つの応募書類
障害者雇用の就職・転職活動では、履歴書を含む以下3つの応募書類を作成しましょう。
- 履歴書
- 職務経歴書
- 私の障害について
書類によって選考の用途が異なるため、それぞれ個別に作成してください。
書類ごとの違いや注意点については、以下の記事でまとめています。
履歴書と職務経歴書の違い
履歴書と職務経歴書は混同されがちですが、異なる書類です。
内容 | 役割 | |
---|---|---|
履歴書 | 応募者のプロフィールを確認する書類 | 応募者の人物像を確認し、採用後の人事資料として保管 |
職務経歴書 | 応募者のスキル・経験や業務適性を確認する書類 | 詳しい実務経験や能力を確認し、自社の求める能力と合致する人かを判断 |
履歴書は個人情報や経歴など、応募者の人物像を確認するために使います。
一方で職務経歴書は、募集している条件と合致しているか、長く働き貢献してくれそうかなどを確認するために使います。
転職活動の書類選考では、履歴書よりも職務経歴書を重視されやすいです。応募書類をさらに磨き上げるなら、職務経歴書を優先してテコ入れしていくと良いでしょう。
「私の障害について」の書き方
「私の障害について」は、応募者の障害特性や配慮事項を記載する書類。必須書類ではありませんが、募集企業にどんな特性があり何に気を付ければいいかを伝えるために作成しましょう。
以下3点を記載しておくと伝わりやすいです。
- ご自身の障害の概要
- 障害特性と配慮事項
- 関連機関
大切なのは書類を作ることよりも、自分で自身の特性を伝えられること。障害特性や配慮事項を深堀りすることで、ご自身の障害特性や注意点をより言語化できます。
「私の障害について」の作成方法については、以下の記事をお読みください。
自己分析で書類選考の通過率を高める
履歴書はいきなり書き始めるのではなく、まず自己分析を行なってから取り組むことをオススメします。
自己分析ではご自身の強みや弱みだけでなく、過去の職歴や経験を振り返る「キャリアの棚卸し」も行いましょう。
先に経歴を洗い出しておくことで、書きながら「何年前に働いていたっけ?」と思い出す手間を削減可能。結果的に早く正確に履歴書を書き上げられます。
自己分析は転職活動そのものの目的も見直すため、方向性を定めるうえでも始めに実施しておくと効率的です。
自己分析のやり方とメリットについては、以下の記事で詳しく説明しています。
履歴書作りのよくある質問
履歴書を作るうえで、よくある質問について解説します。
まとめ|履歴書は不備なく丁寧に
本記事では基本的な履歴書の書き方と、障害のある方が迷いやすい項目について紹介しました。
- 一般就職との違いは「障害者手帳」の記載
- 配慮事項は別書類に分けた方が分かりやすい
- 履歴書の作成はパソコンがオススメ
転職活動を進めるうえで、履歴書の作成は避けて通れません。不備なく丁寧に、分かりやすく記載することが大切です。
履歴書はあくまで過去の経歴を記す書類。実務スキルや自己アピールについては、職務経歴書で行うといいでしょう。
障害特性や職場に求める配慮事項については、別書類「私の障害について」を作成することをオススメします。
書類選考の注意点や提出前にやるべき確認事項については、以下の記事で詳しく説明しています。