- アピールできる経験が思いつかない…
- 自己PRって何を伝えたらいいんだろう?
- 自己PRで面接の通過率を上げたい!
就職・転職活動をするうえで、なかなか思いつかないと悩みがちな「自己PR」。アピールしなきゃと必死に考えても、なかなかいい言葉が出てこない人は多いです。
私も自分に自信が持てなくて「そんなのない!」って思ってた。
本記事では発達障害がある方に向けて、就活や転職活動で魅力的な自己PRをするためのポイントを3つ紹介します。
結論からお伝えすると、「自己アピール」ではなく「自己PR」を前提に考えましょう。
- 自己アピール:自分の主張を伝える
- 自己PR:企業側の需要を軸に訴求
発達障害があると、自信の無さから強みをうまく表現できず、不安になりがち。良さが伝わらず他者に埋もれてしまうため、結果として就活や転職活動が長引いてしまいます。
- 企業側に自分の能力を、もっとうまく伝えたい!
- せっかくのチャンスで低評価を受けるのは嫌だ!
そんな方は本記事を、ぜひ最後までお読みください。
自己PRの基本的な考え方と重要性
自己PRは就職活動や転職活動において、ご自身の強みを企業へ伝える「訴求」です。自己PRで能力やメリットを訴求することで、採用や選考通過を後押しします。
訴求とは、なにかを訴えて要求したり、広告や宣伝を通じて消費者の購買意欲に働きかけたりすることです。ただ情報を伝えるだけでなく、なんらかの行動を求める意図が含まれています。
引用:小学館「Domani」
自己PRは、ただ自己紹介をするだけではありません。企業が求めるスキルや価値観に、自分の強みや発達障害の特性を「どう結びつけるか」が重要です。
企業によって、求職者に求めるものは異なります。
一つの自己PRを使い回すのではなく、応募先ごとに内容を練り直すことで、より効果的な「訴求」となります。
相手目線になって考える!
魅力的な自己PRを作るポイント3つ
魅力的な自己PR文を作成するには、以下のポイントが重要です。
- 企業側の視点に合わせて強みを伝える
- 自己PRは業界・職種・企業ごと個別に考える
- 伝わりやすい説明の型を意識する
自己PRで伝える内容は自分の中だけで考えず、企業が求めている求職者の姿からも探してみましょう。
手が止まったときは視野を広げてみよう。
企業側の視点に合わせて強みを伝える
自己PRでは企業が求める人材像を理解し、それに合わせて自分の強みを効果的に伝えることが重要です。
自己PRでは実務に関係ない得意なことよりも、実務に使えそうなことを提案しましょう。
無理に「発達障害の特性を活かそう!」と考えてしまうと、かえって的外れな自己PRになってしまいます。
- その求人では、どんな人が活躍できそうか?
- 自分の持っている能力では、何が刺さるのか?
- どうやって伝えたら、具体的にイメージしてもらえるか?
企業は自己PRを通して、あなたが「部署に配属したときに仕事を振れそうか」を確認しています。
実務に使えそうなスキルを具体例も織り交ぜつつ伝え、採用担当に「働くあなた」を想像してもらいましょう。
例)経理職の求人
毎日数字を扱い、ミスのない仕事を求められる=「集中力がある」「数字に強い」「ルーティン業務が得意」などがアピールポイントとして想像できる。
コツは求人内容から必要そうなスキルを想像して、「私は持っています」と伝えること。入社後にどのような形で役に立ちそうか、具体的な実務やシーンを提示できたらより良いでしょう。
「訴求」が刺さるポイントは、各企業や求人ごとに異なります。
自己PR文は業界・職種ごと、特に志望度が高い求人の場合は専用の自己PRを考えることをオススメします。
自己PRは業界・職種・企業ごと個別に考える
自己PRは志望動機と違い、一度作った内容をテンプレ化し使い回す人もいます。
筆者がXにて行ったアンケートでは、自己PRを使い回す人と毎回書き換える人の両パターンがいました。
もし異なる職種で自己PRを使い回している場合、求人内容と「訴求」が合っていない可能性があります。
例)訴求がズレている
体を動かしコミュニケーションを取ることが主体の介護職に対し、事務職の経験から書類作成力をPRしている
年間で何百通も応募書類を見る採用担当者は、コピペや使い回しの自己PRを簡単に見抜きます。
自己PRは求人ごとに合わせることが理想ですが、もし使い回す場合でも「自己PRの訴求が仕事内容と合っているか?」を確認してから使いましょう。
伝わりやすい説明の型を意識する
自己PRを効果的に伝えるには、伝わりやすい説明の”型”を意識することが重要です。
型があれば考える際の負担は軽くなるうえ、読み手・聞き手である採用担当者のストレスも減ります。
自己PRなどの提案するシーンには、PREP法を活用するといいでしょう。結論から先に伝えることで、主旨をつかんでから説明を把握できる型です。
PREP法は主にビジネスシーンで用いられる文章構成方法であり、簡潔かつ説得力のある文章を作成する際に用いられる。PREP法における「PREP」とは以下の
・P=Point(結論)
・R=Reason(理由)
・E=Example(事例、具体例)
・P=Point(結論を繰り返す)
の頭文字を取っている。最初に結論を伝え、次にその理由を説明、事例で理由を補強し、最後に結論を再度提示するストーリーを展開する。
引用:Wikipedia
例えば「注意力が高い」という自己PRでは以下の通り。
P:「私は細部への注意力が高いです」
R:「発達障害の特性により、細かな違いに敏感だからです」
E:「以前の職場で、他の人が見落としがちな数値の誤りを発見し、大きなミスを防いだことがあります」
P:「この注意力の高さを活かし、御社でも正確な業務遂行に貢献できます」
具体例を入れることで、採用担当者は「自社の業務では役立つだろうか?」とイメージしやすくなります。
それぞれの項目は一文を30~40字程度に抑えると、より概要を理解しやすくなるでしょう。
面接時に話して伝える場合でも、端的で分かりやすい人という印象を持ってもらえます。
自己PRで避けるべき表現と考え方
自己PRを作る際には、避けた方がいい表現や考え方があります。
- 自分を過小評価しない
- 誇張しないで強みを伝える
- 一方的な自己アピールをしない
あくまで自己PRは、企業に「良さそうだ」と思ってもらうための提案。自分の強みを正直に、かつ前向きに表現することが大切です。
せっかくのPRが無駄になっちゃう!
自分を過小評価しない
発達障害がある方のなかには、自信のなさから自分の能力を過小評価する人が少なくありません。特性による失敗経験から、全てにおいてマイナスイメージを抱えている人もいるでしょう。
前提として自分の価値や能力を、低く見積もるのはNG。「できないこと」だけでなく、「できること」「できるようになったこと」にも目を向けてください。
自己PRは「できること」や「できるようになったこと」を企業に訴求することが大切。提案できるような能力がないと感じる場合、ツールなどを使って客観的に自分を知ることをオススメします。
特性や自信のなさに落ち込むだけでなく、今もっている武器を再確認しにいきましょう。
誇張しないで強みを伝える
自己PRでは過小評価だけでなく、過大評価も避けましょう。本来以上に強く提示しすぎると、入社後にご自身の首を絞めるリスクがあります。
自己PRを考えるときは、企業のニーズに合わせて訴求するネタを考え、客観的にメリットを伝えることが大切です。
- 数字などのデータ
- エピソードや実例
- 資格や制作物サンプル
強みの背景を伝えることで、より信頼性のある自己PRが可能になります。
企業は具体的な成果や実績から採用の判断をすることが多いため、なるべく事実ベースで提案してください。
また発達障害の特性をうまく活かしたエピソードは、障害者雇用で転職する際に「配慮するだけではない」と印象付けられます。
求人内容や求められる能力に合わせて、魅力的に感じるような提案を考えましょう。
一方的な自己アピールをしない
自己PRにありがちな失敗は、一方的な自己アピールをしてしまうこと。発達障害がある方のなかでも、興味関心に強くフォーカスしがちな方は特に気を付けてください。
- 自己アピール:自分の主張を伝える
- 自己PR:企業側の需要を軸に伝える
効果的な自己PRには自分視点だけでなく、企業側のニーズとのバランスが不可欠です。
自分にどんな能力があるかを伝えるだけでなく、その能力が企業にとってどのように役立つのかもセットで言及しましょう。
例)発想力の高さを提案したい場合
どのように業務効率の向上に貢献できるか?求人ポジションと関係があるか?など、企業側にとってのメリットを具体的に伝えてください。
自己PRに使える”強み”を見つける方法
自分には自己PRできるような”強み”がないと思っている方は、以下の3つを試してみましょう。
- 課題に取り組んだ経験や工夫を活かす
- 親しい人や相談できる人に話を聞く
- 適職診断を受けて自身の強みを理解する
発達障害がある方は、過去の失敗経験から自己肯定感が低くなりがち。無理に一人で”強み”を探そうとしても、失敗する可能性があります。
まずは職務経歴を丁寧に振り返り、第三者やツールの意見も参考にしてください。
ネタがなければPRもできない!
課題に取り組んだ経験や工夫を活かす
まずは丁寧に過去の経験を振り返り、課題に取り組んだ実績や自分なりに思いつた工夫を探してみましょう。
仕事での経験だけでなく、日常生活や日々の改善活動なども有効です。
例えば発達障害の特性で、うまくいかないときの試行錯誤。
発達障害の特性を「うまくいかない…」と諦めずに「次にどうしようか?」と考えた経験も、十分に自己PRのネタとなるでしょう。
課題を見つけて乗り越えた経験は、仕事でも「問題にぶつかったときにどう乗り越えるか」を考えられる証明になります。
問題の前で立ち止まらず、どう乗り越えたらいいか?に視点を変えられるのは、物事に前向きに取り組める証拠です。
自己PRを魅力的にするには、”強み”のネタ探しがポイント。何を伝えるかによって、採用担当が受ける印象は大きく変わります。
親しい人や相談できる人に話を聞く
一人で考えても解決できない場合は、親しい人や相談できる人に聞いてみることをオススメします。
強みのなかには「自分は気付いていないけど、周囲からはよく分かる強み」もあります。相談していくなかで、初めて気付ける”強み”もあるでしょう。
家族や友人はもちろんのこと、就労移行支援のスタッフや相談員、プロの転職エージェントなどに頼ってみるのも有効です。
適職診断を受けて自身の強みを理解する
適職診断を受けることで、ご自身の強みを客観的に理解することも可能です。
質問に答えていくことで価値観や向き不向きが鮮明になり、データによる詳細な診断結果を受け取れます。
一般向けの転職サイトで無料公開しているケースもあるため、ぜひ活用してみましょう。
診断結果はストレス耐性や性格、向いている仕事などが分かるため、今後の就活・転職活動にそのまま活用できます。
適職診断は無料で受けられるツールもあるため、自己PRの内容に行き詰まったときは使ってみましょう。
自己分析の質が魅力的な自己PR作りに影響する
魅力的な自己PRを作るには、前提として自己分析の質が大きく影響します。
深い分析や自己理解があってこそ、企業に響く自己PRが思いつくもの。自己分析は単に「強みや弱み」を探すだけでなく、今後のキャリアの方向性を決める大事な役割です。
- 過去の職務経験をすべて洗い出す
- 就職・転職で絶対に譲れない点を決める
- 障害特性と対処法を正しく認識する
転職における「スタートとゴール」を決めるのが自己分析。求人選びの質が変わったり、自信をもって自己PRを訴求できたりします。
良い自己PRのネタが思いつかないときは、自己分析からやり直してみるといいでしょう。
困ったら自己分析から再スタート!
発達障害の特性を活かした自己PRの例文
企業や職場に合わせた自己PRの例文を、いくつか紹介します。
- 例文1:シングルフォーカス×集中力
- 例文2:思考の散らかり×アイデア
- 例文3:高いこだわり×質の高い製造
- 例文4:筆者が実際に提出した自己PR文
あくまで例。参考にしつつ、自分の言葉で作ろう!
例文1:シングルフォーカス×集中力(事務職)
【高い集中力とパフォーマンス】
私の強みは高い集中力です。発達障害の特性上、目の前の作業にのめり込みやすい傾向があります。この特性により淡々と同じ作業を繰り返す仕事でも、集中力を切らさずに続けることができます。特にパソコンでのデータ入力を得意としており、何時間でも同じパフォーマンスを維持し続けることが可能です。貴社求人のデータ入力業務でも、集中力の特性を活かして貢献できると考えております。
発達障害によく見られる特性の「シングルフォーカス」を短所ではなく長所と捉え、仕事内容にマッチする強みとしてPRしています。特性を自己PRに絡めることで、発達障害はデメリットだけじゃないと企業に伝えることも可能です。
企業にメリットを提示し「業務に適正がある」と感じてもらいつつ、苦手なところへの合理的配慮をお願いすると理解してもらいやすいです。
例文2:思考の散らかり×アイデア(企画職)
【アイデアの発想力】
私の強みは多様なアイデアを生み出す力です。発達障害の特性から、思考がさまざまな方向に広がりやすい傾向がありますが、私はこれを長所と捉えています。貴社求人では企画職として、既存の枠にとらわれない発想を活かした提案や、新たな視点から問題解決の糸口を見つけることができます。特に、創造的な業務や新しい企画の立案を得意としており、アイデアを出す場面で大きく貢献できると考えています。
発達障害の特性である「思考の散らかり」を短所ではなく強みと捉え、仕事に適応する形でPRしています。
企業に発想力という価値を提供し「柔軟な思考が必要な業務に適している」と感じてもらえれば、苦手な部分についての配慮も理解を得やすくなるでしょう。
例文3:高いこだわり×質の高い製造(CADオペ)
【業務への高いこだわり】
私の強みは、細部に対する高いこだわりと正確さです。発達障害の特性上、一度気になった点を徹底的に掘り下げる傾向があります。貴社求人のCAD製図でも、設計図面の精度を高めることや、微細な調整作業に対して深いこだわりを持って取り組むことができます。特にミリ単位の誤差が影響を及ぼすような場面で、そのこだわりが成果を生むと自負しています。
発達障害による「こだわりの強さ」を短所ではなく、製図の精度向上に寄与する強みとしてPRしています。
特性を自己PRに絡めることで、発達障害がデメリットだけでないことを企業に伝えられます。「こだわり」による弊害についても、必要な配慮を理解してもらいやすくなるでしょう。
例文2:筆者が実際に提出した自己PR(事務職)
【自分で調べる力】
私には物事を自分で調べて解決する力があります。これまでも分からない事や困った事が起きたらまず自分で調べ、より良い解決方法を模索してきました。初めて担当する仕事でも書籍やネットを活用して方法を調べたり、上司へ相談する前に少しだけ取りかかってみたりと、自分で改善方法を探して実行する力があります。前職でもExcelのVBAに挑戦したり、Power pointによる資料作成などにも率先してチャレンジしました。新しいことにもひるまず、調べながら進めていける事が強みです。
上記は筆者が実際に企業へ提出した自己PR文です。私には「自分で背負い込んでしまう白黒思考」があるため全部自分でやろうとする特性があります。
この特性を前向きに捉えて、ポジティブな表現に変換して盛り込みました。
一方で私はこの状態が続くと、メンタル面のバランスが崩れやすいです。
そのため配慮事項に「業務が立て込んだときは誰かと相談したい。」と記載し、万が一不具合が起きたときにフォローしてもらえる体制を依頼しました。
面接で自己PRを伝えるコツ
自己PRは履歴書や職務経歴書に書くだけでなく、面接でも質問されることが多いです。
面接での自己PRは、単に文章で書いた内容を伝えるのではなく、自分の言葉で説明できるように準備することが大切です。
話す際には具体的なエピソードを交え、企業に自分の強みがどう役立つかをより明確に伝えてください。
面接官の反応を見ながら話す内容を調整したり、複数のエピソードパターンを用意したりするのも効果的です。
書類の自己PRと面接の自己PRでは、難しさの質が違う!
自己PRと合わせて配慮事項も考える
自己PRと合わせて、特性や苦手なことへの「配慮」も考えておきましょう。
提案できる優れた面があるのと同様に、トラブルや不具合にもつながりやすいのが発達障害の特性。
「ただサポートしなきゃいけない人」ではなく「できることもあるけど、苦手のこともある人」というイメージを持ってもらうため、自己PRと配慮事項はセットで考えましょう。
配慮の考え方や書き方のポイントについては、以下の記事で詳しく説明しています。
自己PRと配慮はセットで考えよう!
まとめ|自己PRで企業にしっかりと自分の強みを伝えよう
本記事では、発達障害のある方向けの魅力的な自己PRの書き方、伝え方を紹介しました。
- 企業の視点に合わせて自分の強みを伝える
- 自己PRは使い回さず、求人や職種ごと個別に考える
- 伝わりやすい説明の”型”も活用する
自己PRは就活や転職活動をするうえで、企業に魅力を伝えるための重要なスペース。
「面接で話を聞いてみたい」「この人ならやってくれそうだ」と感じてもらうため、一社一社「訴求が刺さるか?」を意識して考えましょう。
完成した自己PRは、プロの転職エージェントに見てもらい、フィードバックを受けることも有効です。
まずは自己分析を振り返りつつ、次に応募する求人専用の自己PRを考えてみましょう。