- 初めての障害者雇用なんだけど、配慮って何?
- 配慮の書き方ってどうすればいいんだろう。
- 企業の理解が得られる配慮事項の書き方を知りたい!
障害者雇用に応募するうえで、配慮事項を考えることは避けて通れません。
適切に配慮が伝えられないと、かえって自分の障害に対する理解が浅いと受け取られることもあります。
勘違いで選考が不利になることも…!
本記事では障害者雇用の配慮事項について、考え方や具体例をまとめて紹介しています。
求人応募の際に配慮事項を伝えるポイントは、以下の3つ。
- 具体的な表現で伝える
- 企業側に何を望むかを伝える
- 自分でできることも伝える
- 「伝わる配慮事項の書き方が知りたい!」
- 「勘違いで不採用になるのは嫌だ!」
そんな方は本記事を、ぜひ最後までお読みください。
障害への配慮事項とは効率的に働くための調整
配慮事項とは、障害がある人でも効率的に働くための調整のことです。
特性による困りごとに合わせて職場環境やツールなどを整えたり、コミュニケーションの手段を工夫したりするための措置。
配慮をしてもらうことで、ご自身の能力を最大限に発揮することが目的です。
職場のリソースに応じて、可能な範囲で配慮を受けられます。
配慮事項の書き方、伝え方
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配慮事項は障害者雇用に応募するうえで必要になる、企業へのお願い事。障害者求人の選考では、必ずと言っていいほど聞かれる質問です。
「障害についての説明書類」を作成しておき、面接で聞かれた際に答えられるよう準備しておきましょう。
以下3つのポイントを押さえて、採用担当に「あなたが職場で働く姿」をイメージしてもらうことが大切です。
- 障害特性と困りごと
- 自己対処していること
- 企業に頼みたい配慮
障害特性と困りごと
働くうえでの困りごとや、配慮が必要な障害特性についてを明確にします。
苦手なことや弱みについて整理し、仕事への影響があることをリストアップしてください。
まずは仕事をするうえでネックになっている弱みを見つけ、具体的にしていきましょう。
ポイントは配慮が必要な特性や困りごとという点。自己対処できることであれば、認知してもらうだけで十分なケースもあります。
過去の失敗経験や周囲の人からの意見が手がかりになるよ!
自己対処していること
希望する配慮のうち、どこまでを自己対処して、どこから配慮が必要なのか伝えましょう。
あくまで業務を受ける前提で考え、ピンポイントで難しい範囲を調整するようにしてください。
こちらから「ここまではできます。」と提示し、一方的に断るだけとならないようにしましょう。
0-100でキッチリ分けず、線引きしよう!
企業に頼みたい配慮
自分でできる対処を伝えたうえで、それでも乗り越えることが難しい問題に対して配慮を求めていきます。
そのため特性を説明したうえで、企業側が「配慮が必要だ」と判断するプロセスが必要です。
自分でもできる対策を行ったうえで、さらに仕事を進めやすくするために企業側からも調整してもらいましょう。
企業側のできる範囲でサポートしてもらうことがポイント!
【例文付き】配慮事項の具体例と考え方
配慮事項を考えた際の考え方をベースに、深堀りする方法と例文をまとめました。
例文をそのまま使うのではなく、配慮事項を書くときはご自身の特性からお考えください。
ポイントは「本音ベース→なんで?→何ができる?→どうなるとヤバい?」です。
ひとりで考えるのが難しい場合は、支援者と相談しながら作っていくのも有効です。
- 指示系統と優先順位
- メモと指示の確認
- 定期通院と休暇の希望
指示系統と優先順位
例にあげると、次のような文章です。
複数の方からの指示があると優先順位がつけにくいです。頂いた指示はリスト化を心がけていますが、指示が重なると混乱してしまうかもしれません。可能であれば業務上の指示は、数名の方に絞って頂けたら幸いです。
こちらを本音ベースで書くと、このようになります。
いろんな人から仕事頼まれるとパニックになって思考停止してしまいます。
本音のままだと企業側は、どのように仕事を頼めばいいのか分かりにくいです。
こちらの文章を、次のように分解していきます。
- いろんな人から→なんで?
→いろんな人から指示されると、誰の仕事を先にやればいいかわからない - パニック→なんで?
→今やってる仕事の途中で指示されると、順番がわからなくなる - 思考停止→なんで?
→頭の処理能力が追いつかなくて無理、何も考えられなくなっちゃう
更にあなたが可能な自己対処を追加していきます。
- 仕事の指示→メモはできる
- 優先順位→メモをみてToDoリストを作れる
- 担当者→○人までなら対応できる
自己対処のキャパシティを超えてしまうシチュエーションを想像してみます。
- メモはできる→指示が多すぎて管理できない
- リストを作れる→ToDoリストが増えすぎて慌ててしまう
- 対応できる人数→多すぎると立場や役職まで意識できなくて困る
指示・ToDoリスト・指示者が増えすぎると困ってしまい、業務に支障が出ることが分かりました。
漠然とできないことを伝えるのではなく、シチュエーションまで考えると伝わりやすいです。
メモと指示の確認
例にあげると、次のような文章です。
口頭での業務指示は、聞くこととメモの同時作業が難しいです。指示の際、メモに時間がかかってしまうかもしれません。またメモをした内容に不安があった場合は、指示頂いた内容をメールにて送付いたします。チェック頂けると安心して業務に取りかかれます。
こちらを本音ベースで書くと、このようになります。
指示を聞いて理解したりメモを書いたり、同時にすることができません。分からないまま仕事を進めてミスしないか不安です。
このままだと企業側は「じゃあどうしたらいいの?」と具体的なアクションまで踏み込めません。
こちらの文章を、次のように分解していきます。
- 同時にすること→なんで?
→聞いたことを整理してメモする前に、次の話が出てきて整理が追いつかない - 分からないまま仕事を進めて→なんで?
→どこから分かっていないか言葉に変換できなくて質問しにくい - ミスしないか不安→なんで?
→指示を正しく理解できているか不安で怖くて聞けない
更にあなたが可能な自己対処を追加していきます。
- 整理する前に次の話→整理に時間がかかることを指示者に伝える
- 言葉に変換できなくて質問しにくい→書いたメモをそのままメールで送ることはできる
- 指示を正しく理解→理解やメモに時間がかかることを自覚する
自己対処のキャパシティを超えてしまうシチュエーションを想像してみます。
- 整理に時間がかかる→指示者が待たずに次々話してしまう
- 書いたメモをそのままメール→指示者がメールを確認してくれないかもしれない不安
- 指示を正しく理解→指示を間違えて理解し、確認しないまま業務を進めてしまう
指示スピード・理解のズレ・指示者のあなたへの認識などがトラブル要因になりそうです。
定期通院と休暇の希望
例にあげると、次のような文章です。
薬の処方と体調変化をチェックするため、月1回水曜日に精神科へ受診しています。主治医の診察が水曜日のみのため、通院の日は休暇を頂けたら幸いです。受診時に次の予約が確定しますので、予定がわかり次第ご報告いたします。
こちらを本音ベースで書くと、このようになります。
定期通院して薬をもらうので、平日に休みたいです。
薬と通院のために休みが必要なことは分かりますが、頻度や曜日などが企業側に伝わりません。
こちらの文章を、次のように分解していきます。
- 定期通院→なんで?
→薬の処方が○ヶ月までと決まっているから - 平日に休暇→なんで?
→主治医に受診できる曜日が決まっていて、仕事の日と被るから
更にあなたが可能な自己対処を追加していきます。
- ○ヶ月まで→次の受診日の目星がつく
- 受診できる曜日→あらかじめ曜日を伝えることはできる
- 仕事の日と被る→前もって受診日を伝えることはできる
ただ「休みが欲しい」と伝えるのではなく、分かっている情報をあらかじめ伝えると、企業側も急な対応にならず準備が可能です。
代わりに作業する人の配置にも関わるため、伝えられる範囲で具体的に説明するといいでしょう。
配慮事項を記載する場所
応募書類に配慮事項を記載する場所は、以下の3つがあります。
- 職務経歴書に項目を作る
- 「わたしの障害について」を作成
- 履歴書の備考欄に記載
どの方法であっても、簡潔で読みやすい表現を心がけましょう。書類に記載したことを前提に、面接で具体的な運用を調整してください。
職務経歴書に項目を作る
職務経歴書の後半に、「希望する配慮事項」「ご配慮いただきたいこと」などの項目を作って記載しましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
書類の種類を増やさずに済む 自己PRや経歴とセットで把握できる 職務内容と関連付けて配慮事項を説明しやすい | 大きなスペースを確保しにくい 他の経歴内容と混ざり、見落とされるリスクがある 職務経歴書の枚数が増えて読み手の負担が大きくなる |
業務経験と配慮事項を一貫した説明をしたい方や、配慮の必要性を職務内容と関連付けて伝えたい方にオススメです。
「わたしの障害について」を作成
配慮事項を別途「わたしの障害について」という書類としてまとめ、応募書類に添付する方法です。
メリット | デメリット |
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配慮事項をひとつひとつ詳細に記載できる 別書類として明確に分けることで、把握しやすくなる 必要に応じて情報の更新や修正がしやすい | 書類の種類が増えるため、応募書類全体のボリュームが多くなる 面接担当者に配慮事項を確認してもらえないリスクがある 記載内容が長すぎると、かえって伝わりにくくなる可能性がある |
配慮事項をしっかりと伝えたい方や、詳細な情報を職場側に周知してもらいたい方にオススメです。
また求人企業へ提出しない場合でも、自己理解を深めるために一度「わたしの障害について」を作ってみるといいでしょう。
履歴書の備考欄に記載
履歴書の備考欄に、配慮事項を簡潔に記載する方法です。
メリット | デメリット |
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全体的にコンパクトにまとめられる 応募者の基本情報とセットで確認できる 簡潔に書くことで、読み手の理解が進みやすい | 記載スペースが小さいため、詳細な配慮事項を書けない 他に備考欄で記載したい内容が書けなくなる 枠が狭く配慮の重要性が十分に伝わらないリスクがある |
配慮事項を簡潔に伝えたい方や、応募書類をコンパクトにまとめたい方にオススメ。職務経歴書の枚数が多く、書ききれない場合にも有効です。
配慮事項を伝えるポイント3つ
配慮事項を伝える際に、意識するポイントを3つ紹介します。
- 具体的な表現で伝える
- 企業側に何を望むかを伝える
- 配慮と工夫の線引きをする
企業の採用担当者は、個別の障害に対するプロではありません。障害名だけ伝えても、どんな事に困っているのかイメージできない場合が多いです。
適切な配慮を受けるために、伝え方をブラッシュアップすることが重要です。
具体的な表現で伝える
障害特性や困りごとは、具体的に伝えましょう。ただ障害名を伝えるだけや、曖昧な表現で伝えてしまうと、企業側はどんなアプローチをすればいいのか分かりません。
例)
- 仕事を覚えるのが苦手です。
- 一度に多くの業務を覚えることが苦手なため、少しずつ切り出していただけるとありがたいです。
困りごとを具体的に表現することで、企業側は配慮しやすくなります。理解と協力を得るためにも、具体的な表現を意識してください。
企業側に何を望むかを伝える
配慮を伝える際は、できないことではなく何をしてほしいかを伝えてください。
ただ「できないです」と伝えても、どんな対策を取れば働けるのかが伝わりません。できないことを踏まえたうえで、企業側に何をしてもらえれば働けるのかを開示しましょう。
例)
- 電話対応ができないです。
- 電話対応が苦手なので、他の業務に慣れるまではご配慮いただけると幸いです。
大切なのは、何を望むかをはっきりと伝えること。できないことだけ伝えてしまうと、本来求めていない配慮を受ける可能性があります。
配慮と工夫の線引きをする
企業側に求める配慮と、ご自身の工夫の線引きを明確にしてください。
自分で行っている工夫や対策は、職場での配慮を最小限に留めることにも繋がります。
配慮のリソースが少なくなれば、適切なサポートを受けながら職場で活躍する機会も増えるでしょう。
例)
- 騒がしい場所が苦手なので配慮してほしいです。
- 騒がしい場所が苦手なので、安定して働くために耳栓を使用しています。ご理解いただけると幸いです。
一方的に配慮だけ求めてしまうと、ただのわがままと勘違いされてしまう可能性があります。
合理的配慮とわがままの違いは相互理解
配慮は考え方を間違えると、一方的に要望を押し付け「わがまま」と受け取られてしまう可能性があります。
配慮はあくまで、働くための障壁を取り除くことがポイント。相互理解によって、個々に調整してください。
「合理的」と名がつく通り、より業務を任せやすくするための対策だと考えましょう。
- 「できない」ではなく「してほしい」
- 配慮の過不足には不満よりも調整
- 支援者の介入に頼りすぎない
合理的配慮とわがままの違いについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
「できない」ではなく「してほしい」
配慮を考える際に特に重要なのは、「できない」ではなく「してほしい」で考えること。
ただできないと突っぱねるのではなく、業務を行ううえで企業に何をしてほしいかの視点で考えましょう。
- できない→免除してほしい、補助がほしい
- 分からない→習得に時間がかかることの理解
- 難しい→理解しやすい方法で頼みたい
また、これまでの仕事経験のなかで「できない」と感じたポイントは、自身の障害に対する理解を深めるチャンスです。
「免除してもらう」「訓練して改善を試す」など、少しずつ対策を考えていくことをオススメします。
配慮の過不足には不満よりも調整
障害への配慮のアプローチは、一度で完璧に整うものではありません。特性の仕事への影響について、働き始めてから気付くことも多いです。
入社時の取り決めが合わず不満を抱えるのではなく、定期的なすり合わせを行って調整することが大切です。
配慮が足りずに働きにくい場合だけでなく、配慮されすぎて物足りない場合も職場と相談しましょう。
支援者の介入に頼りすぎない
障害者雇用では、企業と私達の間に支援者が入るケースが多いです。
- 就労移行支援事業所
- 障害者就業・生活支援センター
- 地域障害者職業センター
支援者は職場に話しにくい仕事の悩みを相談したり、第三者として調整の手伝いをしてもらったりする役割。長く働き続けるために、サポートを受けるメリットは大きいです。
一方で困りごとを全て支援者経由で解決していては、職場の理解は進みません。場合によっては、自己発信が難しいと勘違いされてしまう恐れもあります。
あくまで問題はご自身と職場で解決し、どうしても調整が難しいときに支援者を頼るようにしましょう。
「配慮事項なし」は不信感に繋がる
配慮事項は、仕事についていけない弱みについてピンポイントで手助けしてもらうための措置。
仕事への態度を大目に見てもらうわけでも、成果や作業の質を落としてもいいわけでもありません。
一方で「配慮して欲しいことはありません」と伝えると、なぜ障害者雇用に応募してきたの?と受け取られてしまいます。
「何に配慮してもらったらいいんだろう?」と悩んでいる方は、ご自身の障害特性への自己理解を深めることをオススメします。
自分で特性を把握できていないと、企業は「具体的に何をしたらいいの?」と困っちゃう。
適切な配慮が受けられない場合の対処法
障害者雇用であっても実際には、適切な配慮を受けられないケースは少なくありません。
背景には、職場側が原因の場合と、私たち側が原因の場合が考えられます。
- 職場からの配慮が得られない
- 自分に必要な配慮が分からない
職場からの配慮が得られない
職場に合理的配慮を求めても、すべての希望が受け入れられるわけではありません。
- 十分な配慮を提供する人員リソースがない
- 設備や備品にかかるコストが高額すぎる
- 会社の制度や仕組みから作り直す必要がある
希望する配慮がその企業において、現実的でない場合は対処することが難しいです。代替案を提案し、実現可能な範囲で調整を行いましょう。
職場側に合理的配慮への理解が足りていないときは、支援者に介入してもらい調整することも有効です。
職場側にそもそも配慮する気がない、働きにくいと感じる場合は、転職を視野に入れてください。
職場との話し合いを続けながら、自身に合った最適な選択を考えましょう。
自分に必要な配慮が分からない
適切な配慮を受けるには、まずご自身にとって必要な配慮を知ることが先決です。
- 職場に漠然とした「お願い」をしている
- 必要性の説明ができない、伝わらない
- 職場側にとって無茶な要求をしている
適切な配慮を得るためには、自分の困りごとを明確にし、その対策を具体的に伝えることが大切です。
まずは自己分析を行い、働くうえでどんな困りごとがあるのか?何をサポートしてもらえれば働きやすいか?などを見つけましょう。
また、行き過ぎた配慮の希望は、わがままと受け取られるリスクがあります。職場の視点を考慮し、双方が納得できる形を目指してください。
本来の能力を発揮するために適切な配慮を受ける
本記事では障害者求人の応募に必要な、配慮事項の書き方・伝え方について紹介しました。
- 配慮事項を書く際に押さえること3つ
- 職場に理解を得られる伝え方のポイント
- 「合理的」配慮とわがままの違い
適切な配慮を受けることは、障害のある方が能力を発揮するために必要なポイント。
効率的に仕事をするうえでも、誤解されないためにも、時間をかけて考えてほしい項目です。
本記事を参考にして、ご自身の障害特性を上手く伝えるよう工夫してみてください。