- 「私の障害について」を作ってみたけど上手くまとまらない
- 何をどれくらい書いたらいいか分からず、手が止まってしまう
- そもそも何を書いたらいいの?必要な項目が知りたい!
障害者雇用に応募するときは、履歴書・職務経歴書とともに「私の障害について」という書類を提出することがあります。
「私の障害について」は自分の障害特性や配慮事項などを、企業へ提出できる形にまとめた書類。
企業があなたの障害特性を把握しやすくなり、適切な配慮を受けられる可能性が高まります。しかし「私の障害について」を一人で作るのは難しく、挫折してしまう方もいるでしょう。
うまく言葉や文章に落とし込むのは難しい!
本記事では発達障害を持つ方に向けて、「私の障害について」を書くための方法を分かりやすくまとめました。
本記事のポイント
- 障害特性や配慮などの情報をまとめた書類
- 「障害の概要・特性と自己対処・配慮事項」の3点を書く
- A4用紙1枚に整理して、読みやすい文章を心がける
- 自己理解が深まる、口頭よりも把握しやすいなどメリットが豊富
本記事を読めば自分の障害特性を文章で表現できるようになり、企業から適切な配慮を受けられるでしょう。
「私の障害について」の作成でお悩みの方は、ぜひ本記事を最後までお読みください。
「私の障害について」とは障害情報を職場に伝える書類
「私の障害について」は企業側に理解を得るための書類だと、意識して書くことが重要です。
単に障害名や特性の単語を書いていくのではなく、障害が自分や応募職種にどのような影響を与えるか説明することに重点を置きましょう。
「障害者雇用の担当だから知ってて当然。」はNG!
採用担当は障害名だけ聞いても分からない
採用担当はあなたの障害に対して知識が豊富だとは限りません。
障害者雇用にはさまざまな障害を持つ方が応募するため、一つ一つの障害特性を調べることは難しいです。
障害名だけ告げられても「どんな特性があるのか」「配慮すべき点はどこか」などが分からないことがほとんど。
例えば「私は自閉症スペクトラム障害です。」とだけ伝えても、採用担当はその障害が業務にどのような影響を及ぼすのか理解できません。
一方で「私は自閉症スペクトラム障害です。ひとつの物事に集中してしまう、暗黙のルールが理解しにくいといった特性があります。」と細かく伝えれば、担当する業務にどの程度の影響があるかを判断できます。
一方で当事者である私たちは、障害名を聞けば自然とその特性を理解できます。そのため、障害名を伝えるだけで相手にも同じ理解が伝わると勘違いしがちです。
「私の障害について」を作成するときは、具体的に特性や必要な配慮を書き出し、採用担当者にも理解してもらえるよう、分かりやすく伝える工夫をすると良いでしょう。
企業は特性よりも仕事に対応できるかを見る
「私の障害について」で採用担当が知りたいことは、あなたの障害特性ではなく「業務に対応できるかどうか」ということ。
一度書き上げたら全ての求人で使い回さず、職種や業態に合わせて書き換えていくと企業側に理解を得られやすいです。
例として同じ事務職でも、通勤が必要な企業と完全リモートの企業では必要な配慮が異なります。
例)
通勤 | 在宅 |
---|---|
事務所内の音・通勤時間などの配慮 作業中の声掛けに対する苦手感 休憩時間の別室利用、外出の許可 | 勤務時間中の常時カメラON/OFFの配慮 画面共有を使った作業が不得意 休憩時間の声掛け等のサポート |
求人に応募する際は「私の障害について」を見直し、それぞれの求人に必要な内容に書き換えてから提出しましょう。
適切な配慮を得るために具体的な内容を書く
あなたの障害特性や希望する配慮事項は、できるだけ具体的な内容を書きましょう。
- 特性がデメリットになりやすい具体的なシチュエーション
- メンタル不調などの不具合が起きやすいきっかけ
- 「いつ、どんなとき」など配慮が必要になりやすいポイント
具体性がない配慮やサポートのタイミングが分かりにくい配慮は、企業側が受け入れる判断がしにくいもの。
結果として無配慮の状態で採用されたり、受け入れ困難のため不採用となったりしてしまいます。
- 一人でじっくり整理する時間を作る
- 支援者と相談しながら内容を整える
- 仕上げた書類を見直して改善する
など企業側に理解を得られるように手を加え、どんどんブラッシュアップしていくと良いでしょう。
障害特性の自己理解を深めることが先決
「私の障害について」を作る前にまず、障害特性の自己理解を深めることが重要です。
自分の得意なことや苦手なことを把握することで、必要なサポートが明確になったり、自分に合った働き方を見つけたりできます。
ほんの小さな成功体験から、叱責されるほど大きな失敗体験まで、全て振り返りましょう。苦手なことだけでなく、得意なこともまとめて振り返ることが大切です。
成功体験や失敗体験をまとめ、ご自身の強みや弱みを分析しましょう。失敗しやすいシーンや業務内容などをカテゴリ分けすることで、苦手なことやサポートが必要な状況が分かります。
得意なことも合わせて分析することで、自己PRのネタとしても使えます。
分析した結果をもとに、働くうえで配慮やサポートが必要な場面をまとめましょう。「できない」と諦めるのではなく、「どうすればできるか?」と前向きに考えることが大切です。
配慮はあくまで、実現するためのサポートとして考えましょう。
過去を振り返るだけでなく、自己分析ツールを使った分析や、転職エージェントとの面談を通して整理していくことも有効です。
障害特性と自己理解については、以下の記事で詳しく説明しています。合わせてお読みください。
「私の障害について」に書く内容と例文
「私の障害について」に必要な情報は、大きく分けて以下の3つです。
- あなたの障害の概要
- 障害特性+自己対処
- 職場に求める配慮
書類に書く内容は厳選し、A4サイズ1枚にまとめましょう。
応募書類は「私の障害について」だけでなく、履歴書や職務経歴書も提出します。採用担当者の負担を減らすため、必要最低限の情報を記載するよう心がけてください。
ボリュームが多すぎると書く側も読む側も大変!
あなたの障害の概要
まずはあなたの障害内容や、簡単な基本情報を書いていきましょう。履歴書のスペースだけでは書ききれない情報を記載していきます。
- 障害名
- 障害者手帳の種類・等級
- 手帳取得日
- 定期通院・服薬の有無
- かかりつけ病院・主治医
- 主治医の労働許可
障害者雇用には障害者手帳が必要なため、選考が進んだ場合はどのみち確認が必要です。
あらかじめ基本情報を書いておくことで、二度手間を減らし企業に安心感を与えられます。
障害者手帳を持っていないけど障害者枠に応募してしまう人もいるみたい。
障害特性+自己対処
障害特性は人によって異なるので、障害名だけでなく具体的な特徴と自分で対処していることを書きましょう。
認知している全ての障害特性を書いてしまうと圧迫感が出てしまうため、応募する職種や業務に関連する特性を中心に優先度の高いものから記載していきます。
障害特性を書くときは自分でも対処していることもセットで書けば、自分なりに障害と向き合っていることを企業側に伝えることが可能です。
例)
- 突発的な大きい音が苦手です。普段はイヤーマフを使い負担を軽減させています。
- 睡眠が少し不安定です。通院し睡眠導入剤を服薬することで、安定した睡眠を得られています。
- 突発的な割り込み業務が不得意です。万が一を防ぐため、普段からToDoリストで業務を整理し対処しています。
「苦手・できない・不得意」とだけ伝えてしまうと、新しい業務を頼みにくくなってしまいます。
「苦手・できない・不得意」なりにうまくやる方法をセットで伝えられると、採用担当に「自分で考えて工夫できる人」と認識してもらえるでしょう。
職場に求める配慮
特性を理解し可能な限り自己対処をしたうえで、企業側の配慮が必要なことを書いていきます。
配慮事項は「障害特性+自己対処」に書いた内容のうち、自分の努力だけでなく企業側からも歩み寄ってもらう必要があるものを書きましょう。
例)
- 音の過敏+イヤーマフ使用→職場での使用許可
- 睡眠不安定+通院・服薬→定期的な通院許可
- 割り込み業務の苦手+予定管理→予定の共有・声掛け・相談
ただ漠然と「配慮してほしい」と頼んでも、企業側は「具体的に何をしたらいいのか?」が明確になっていなければ判断できません。
配慮事項は具体的に、「こんなことをしてほしい」とお願いすることで調整できるようになります。
配慮事項の書き方は以下の記事で詳しく書いてありますので、こちらも参考にお読みください。
配慮事項は企業との調整を前提に考える
配慮事項は求職者からの一方的なお願いではなく、企業とのすり合わせが必要です。調整や相談を行わない場合、配慮ではなく特別扱い・ただのわがままと受け取られるリスクがあります。
面接時に企業側と話し合い、お互いの妥協点を見つけられると、採用されたあとに気持ちよく働くことができます。
1対1で相談することが難しければ、支援者に面接同席してもらい配慮の調整をサポートしてもらうのも良いでしょう。
筆者が実際に提出した「私の障害について」見本
筆者が転職活動時、企業に提出した「私の障害について」を共有します。
Googleドキュメント形式なので、参考資料としてそのままコピーしてお使いください。
コピーして使ってね!
「私の障害について」の作り方のポイント
「私の障害について」を書くときのポイントを3つ紹介します。
- A4用紙1枚に整理して書く
- 結論を先に書き、詳細を後に書く
- 具体的でイメージしやすい内容を書く
せっかく作成した書類も、採用担当に読まれなかったら意味がありません。
文章は書き方ひとつで読みやすさが大きく変わるため、ポイントをおさえて採用担当に負担のかからない書類作りを目指しましょう。
A4用紙1枚に整理して書く
「私の障害について」に書くことは厳選し、A4サイズの紙1枚に収まるように書きましょう。
採用担当は履歴書・職務経歴書も目を通したうえで「私の障害について」も読むため、障害についての説明が何ページにも渡って書いてあると目を通すことが大変になってしまいます。
「私の障害について」はあなたの障害に対する取扱説明書のようなもの。紙1枚でスッキリまとめてある方が、何ページもある取扱説明書より読みやすく、理解する労力も少なく済みます。
採用担当は応募者一人ひとりに多くの時間をかけられない!
「A4サイズ1枚だけ」と制限することで余計な文章や重要ではない項目がどんどん削れていくため、結果として本当に必要な情報のみを書いた書類が出来上がるでしょう。
結論を先に書き、詳細を後に書く
文章を書くときは結論を先に持っていき、詳細を後ろに書くようにしましょう。
結論を先に持ってくると早いタイミングで主旨が理解できるため、後半の説明も頭に入りやすくなります。
悪い例
良い例
良い例は先に「電話対応は内線のみ」と配慮してほしいことが書いてあるため、読み手は最初に具体的な希望を把握しながら背景や理由を読み進めることが可能です。
一方、悪い例では読み始めからストレスがかかることを書いており、希望する配慮は最後まで読まないとわかりません。
「悪い例」の文を最初の方しか読まなかった場合は、電話対応はストレスがかかるから難しい人と勘違いされてしまう可能性もあります。
障害特性や配慮を勘違いされないためにも、文章の最初に結論を書いて、詳しい説明は後半に書くことをおすすめします。
具体的でイメージしやすい内容を書く
障害特性や希望する配慮は、具体的で企業側がイメージしやすい内容で書きましょう。
- 電話対応が苦手→電話を受けながらメモを取るのが苦手
- 月1回の通院が必要→主治医の診療が○曜日のみのため、月1回○曜日に通院が必要
- 予定の割り込みが苦手→予定が埋まっているときに短納期の業務を受けるのが苦手
ふわっとした表現で書いてしまうと企業側にうまく伝わらず、配慮や調整することが困難になってしまいます。
「私の障害について」に書く特性や配慮事項は、数字や情景を織り交ぜつつ企業側に伝わりやすい表現で書きましょう。
「私の障害について」を書くメリット
「私の障害について」は障害者雇用に必要なだけでなく、さまざまなメリットを受け取ることができます。
- 自分の障害特性を深く整理できる
- 自己理解・自己管理ができる人だと認識される
- 採用後に部署で共有してもらうこともできる
自分の障害内容を文章にするのは非常に大変な作業。短時間でサラッと作ることは難しいです。
しかし転職活動だけでなく採用後もずっと使える書類なので、時間をかけてしっかり作り込むことをおすすめします。
作り込むことで自己理解が深まるメリットもあるよ!
自分の障害特性を深く整理できる
障害者雇用として就職するのであれば、まず自分の障害をしっかり把握して説明できることが重要です。
- 得意なこと・苦手なこと
- 体調が悪くなるタイミング
- 障害と性格の境界線
「私の障害について」を書いていくと、今まで何となく特性と思っていたことも文章に変換する必要があります。
文字に書き出していくうちに特性の表現がどんどん具体的になり、より正確な表現になることが多いです。
- 音が苦手→騒音が苦手→突然の大きな物音が苦手
- 忘れやすい→話しかけられると忘れやすい→頭で覚えていたことを会話によって忘れやすい
- 過集中しやすい→単調作業で過集中しやすい→コピペなどの同じ動作を繰り返す作業で過集中しやすい
特性を書きながら深掘りしていくことで、障害特性と向き合い深く理解することが可能になります。
特性と向き合うことで「どこに配慮が必要か」も明確になるよ!
自己理解・自己管理できる人と認識される
「私の障害について」で障害特性が整理できていると、採用側から「きちんと自分の障害を理解している人だ」と認識してもらえます。
入社時にお願いする配慮だけでなく、働いていく中での体調の変化やヘルプなどの「自己発信」が非常に重要。客観的に障害と向き合える人は自分の異変に素早く気づき発信できるため、トラブルや二次障害へ発展する前に相談できます。
企業側も常にあなたの様子を伺うことは難しいため、常に管理しなくてもよい「必要なときにすぐヘルプを出せる人」は雇用しやすく重宝されるでしょう。
自己理解ができていると、ヘルプを出すタイミングが的確になる!
採用後に部署で共有してもらうことも可能
あなたの特性や配慮を「私の障害について」にデータ化すると、採用される部署内で共有してもらうことも可能です。
得意なことや苦手なことを職場で共有してもらえれば
- 上司だけでなく同僚からも理解を得られる
- 業務の割り振りがスムーズに進む
- 通院などの休みを部署内で認知してもらえる
などのメリットがあります。
一方で障害というセンシティブな情報を共有することになるので、あらかじめ「上司だけ・部署内・社内」など開示する範囲を事前に相談することも必要です。
転職活動中でない人も「私の障害について」の作成はオススメ
「私の障害について」の作成は転職活動中の方だけでなく、就業中の方にもオススメです。
- 文書化することで特性を客観視できる
- 現職の配慮や働き方を見直す機会になる
- 「できるようになったこと」を把握できる
「私の障害について」を作ることで、自分の特性や働き方に対する理解が深まり、必要なサポートや環境が見えやすくなります。
自分自身の成長を確認したり、配慮がなくても「できるようになったこと」を再確認する機会にもなるでしょう。
試しに今の職場環境や特性をまとめ、自己分析してみることをオススメします。
ナビゲーションブック・就労パスポートとの違い
「私の障害について」は、ナビゲーションブックや就労パスポートと似た役割ですが、以下のような違いがあります。
私の障害について | ナビゲーションブック | 就労パスポート | |
---|---|---|---|
対象の障害者 | 全ての障害 | 発達障害者向け | 精神障害者向け |
開発者 | 不明 | 高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 厚生労働省 |
公表年 | 不明 | 2016年 | 2019年 |
作成方法 | 当事者が一人で作成 | プログラムを受講しながら作成 | 支援者と話し合いながら作成 |
資料 | 筆者の事例 | ナビゲーションブックの作成と活用 | 精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会 |
ナビゲーションブックや就労パスポートは、どちらも公的機関が開発したツール。支援を受けながら、少しずつ作成していく障害の説明資料です。
公表はナビゲーションブックが先。就労パスポートは、ナビゲーションブックや他のツールを参考に作成されました。
就労パスポートの様式は、既存の支援ツール(「ナビゲーションブック」、地域就労支援に おける情報の取得と活用のガイドブック「共通様式」、 「就労移行支援のためのチェックリス ト」、「幕張ストレス・疲労アセスメントシート(MSFAS)」、「職業相談補助シート」)を 参考にしつつ、次の点を特に重視して作成した。
引用:第1回 精神障害者等の就労パスポート作成に関する検討会
私の障害については、開発者不明。職場や転職活動時に、職場の人へ情報共有するためのツールです。
ナビゲーションブックや就労パスポートと違って、当事者が一人で作成します。
最初は1ページで完結する「私の障害について」がオススメ!
特性・配慮は支援者に代弁してもらうのも有効
もし障害特性や配慮の希望が自分で説明しきれない場合は、就労移行支援などの支援者に面接同席してもらい代弁してもらうのも一つの手です。
支援者側から客観的に見たあなたの障害内容を企業に伝えてもらえるでしょう。
支援者目線で障害内容を伝えてもらえる一方、デメリットとして「自分の障害特性を自己発信できない」と受け取られる可能性も少なからずあります。
選考を有利に進めたいのであれば「私の障害について」は大変でもあなた自身で作成し、自分の文章や言葉で障害を伝えられるように練習することをオススメします。
自分の障害を客観視することが難しい人は、就職には遠回りですが「就労移行支援事業所」に通って特性の理解を深めることも選択肢のひとつです。
まとめ|「私の障害について」で職場からの理解を得る
本記事では発達障害の方が障害者雇用に応募するときに必要となる「私の障害について」の書き方を紹介しました。
- 「障害概要・特性と自己対処・配慮事項」の3点を書く
- A4用紙1枚にまとめて、企業側が理解しやすい表現を使う
- 自己理解が増す・配慮を共有してもらえる等のメリットが豊富
「私の障害について」は企業側の理解が深まるだけでなく、あなた自身が自分の障害を深く理解するためにも使えます。書類を作り上げていくなかで、障害特性を言葉で説明する力もついていくでしょう。
もし障害者雇用で面接まで進んだ場合、障害の内容や配慮してほしいことは必ず聞かれる代表的な質問。「私の障害について」で障害特性を言語化すれば、面接の場でうろたえずに受け答えできます。
あなたも本記事の内容を参考にして、自分だけの「私の障害について」を作成してみましょう。