- 何社受けても、なぜか面接で落とされてしまう
- 自分に転職はまだ早いんじゃないかと不安になる
- 頑張りたいのに、頑張り方がわからず空回りしている
転職活動がうまくいかず、出口が見えない焦りを抱えている方は多いのではないでしょうか。
特に発達障害がある方の場合、うまくいかない原因をすべて「自分の努力不足」のせいにして、必要以上に自分を責めてしまいがちです。
よしだ「お祈り」を想像してしまって、応募すらできなくなることも…




この記事では、発達障害のある方が転職活動でつまずきやすいポイントや、背景にある「ミスマッチ」について整理しました。
私たち発達障害者が転職活動に難しさと感じるのは、能力や特性だけではありません。特性をカバーしにくい「ルール」で戦わざるを得ない構造にもハードルがあります。
自分の特性やスキルだけでなく、環境や仕組みのミスマッチも転職の難易度を引き上げています。
- 「このまま不満を抱えたまま働くしかないのかな」
- 「もう転職活動をやめて諦めたい…」
そんな方にこそ読んでほしい内容をまとめました。「なぜ難しいのか」を把握したうえで、自分に合った戦い方を見つけていきましょう。
発達障害者の転職で抱える難しさは「ミスマッチ」
私たちの転職活動の難しさは、選考という特殊な環境とのミスマッチから生まれています。
特性による「苦手」は確かにありますが、転職活動では「苦手」をカバーしにくいルールで戦わざるを得ません。
文字だけの書類選考や、即興での受け答えが求められる面接は、私たちの「良さ」よりも「弱み」が目立ちやすい構造になっています。



転職活動って、苦手なことばかり試される感じがする…
たとえば転職活動を進めていくと、以下のような壁にぶつかります。
- 履歴書の「空白期間」や「転職回数」が目立ち、書類選考で落とされる
- 面接で「曖昧な質問」にフリーズしてしまい、準備していたことが話せない
- 「なぜ転職を繰り返しているのか?」と聞かれ、言葉に詰まってしまう
私たちの転職活動では能力の凸凹だけでなく、採用フローそのものにミスマッチが起こります。文字だけの書類や、たった1時間の面接では、良さも悪さも伝えきるのは難しいです。
「できない自分」を責める必要はありません。能力の凹(弱点)に落ち込むのではなく、どうカバーし、どこで戦うかという「戦略」の問題として捉え直すことが大切です。
発達障害者の転職活動を難しくさせる3つの壁
転職活動を難しくしている要因は、以下の3つが考えられます。
- 出力の壁:能力はあるが形式が合わない
- 評価の壁:不利なルールで判断される
- 選択の壁:戦う場所のミスマッチ
出力の壁:能力はあるが形式が合わない
能力はあるのに、書類選考や面接という「形式」が合わないことで評価されないケースがあります。
書類選考では細かな誤字・脱字、書類上の「空白期間」「転職回数」といった文字情報だけで減点されます。面接では「即興での受け答え」や「曖昧な質問への対応」が求められ、準備していたことが話せずに終わるケースも少なくありません。



面接で頭が真っ白になって、何も言えなくなることがある…
たとえば、以下のようなミスマッチが起こります。
- ちょっとした誤字脱字やミスが減らず、なかなか応募に進めない
- 履歴書に空白期間があると理由を聞かれる前に書類選考で落とされる
- 面接で「あなたの強みは?」と聞かれ、説明できずにフリーズする
発達障害の特性が「弱み」として目立ちやすい構造になっています。事前準備の質を高めれば緩和できるため、対策が必要です。
私も面接での即興対応が苦手で、どうしても言葉が出てこなくて1分以上も無言で固まってしまった経験もあります。今の職場の採用面接はオンライン面接だったので、モニター2画面×カンニングペーパーで乗り切っていました。
評価の壁:不利なルールで判断される
転職活動では選考という私たちに不利な「評価ルール」で、本来の能力が伝わらないケースが多いです。
多くの企業の選考では、専門スキルだけでなく「空気を読む力」や「集団の中に溶け込む力」なども見られます。
たとえば、話が脱線しやすい特性や、専門能力は高くても基礎スキルに凸凹がある特性があると、面接では「コミュニケーション力不足」「社会人基礎力不足」と評価されやすいです。
具体的には、以下のような点でマイナス評価を受けやすくなります。
| 企業がよく求めること | 発達障害特性との相性 | 結果 |
|---|---|---|
| 空気を読んで行動する | 明文化されていないルールは認識しづらい | 「協調性がない」と評価される |
| 曖昧な指示でも察して動く | 具体的な指示があれば高い成果を出せる | 「柔軟性がない」と判断される |
| 感情を察して配慮する | 論理的な指摘が優先される | 「気が利かない」と見なされる |



指摘が的確でも「言い方がストレートすぎる」と言われたことがあるよ。
採用の評価基準は企業によって異なります。企業の求める人物像と合わないことは私たちの能力が低いのではなく、その企業の「ゲームのルール」が違うだけ。
違和感を覚えたら応募辞退する、配慮事項を見直して働きやすさのバランスを取るなど、志望度や企業体質に合わせて調整しましょう。
選択の壁:適切な場所で戦えていない
自分に合った「求人の範囲」で戦えていないことで、不採用が続くケースがあります。
転職市場にはさまざまな選択肢があります。自分の能力・希望・状況に合った範囲を選ばないと、ミスマッチが起こります。
- 障害開示:一般クローズ・一般オープン・障害者雇用
- 雇用形態:正社員・契約社員・派遣
- 職種・業務:総合職・専門職・補助業務系など
具体的には、以下のようなミスマッチが起こります。
- 「一般就労×正社員×事務職」にこだわり、競争が激しすぎて書類選考で全落ち
- 「障害者雇用×補助業務」を選んだが、キャリアアップしたい気持ちとミスマッチ
- 「派遣×専門職」が向いているのに、正社員にこだわって苦戦している
どの働き方が偉い・正しいのではなく、今の自分に合った範囲で応募できているかが重要です。もし応募しても手ごたえがない場合は、応募する範囲を変えてみることも戦略の一つです。
たとえばキャリアアップを目指して障害者向けエージェントからの提案が今一つなら、一般向け転職エージェントを使ってみるのも選択肢。私も2025年12月から行っている転職活動では、一般向け転職エージェントがメインになっています。
転職活動の通過率を上げる「伝え方」のポイント
転職活動の通過率を上げるには、自分を変えるのではなく「伝え方」を変えることが重要です。
企業が知りたいのは完璧な人材かどうかではなく、「どう貢献できるか」「どう働くか」。特性をそのまま伝えるのではなく、企業に伝わる形に翻訳することで評価は変わります。
具体的には、以下のように伝え方を見直していきましょう。
- 自己分析:特性を「企業が理解しやすい形」に整理
- 書類選考:「企業の不安を解消する」表現を意識
- 面接対策:「定着」と「再現性」を具体的に示す
自己分析:特性を「企業が理解しやすい形」に整理
自己分析では短所や特性を無理に隠さず、伝え方を工夫して「企業が理解しやすい形」に整えることが大切です。
企業が知りたいのは完璧な人材ではなく、どう対処すれば安定して働けるかです。特性を実際の業務に当てはめたり、対処法とセットで伝えたりすれば、企業は安心して採用を判断できます。
たとえば、以下のように言語化してみましょう。
- 飽きっぽい:飽きっぽいが短期集中型のタスクは得意
- マルチタスクが苦手:手順が決まっている業務の精度が高い
- 指示が曖昧だと動けない:マニュアル通り抜け漏れを起こさず業務ができる
自己分析は単に過去を振り返るだけでなく、今後の方針を立てたり、書類選考や面接でより魅力的に伝えたりするネタになります。
「こういうことができない」と諦めるのではなく、企業側に判断材料を提供する感覚で自己分析することをおすすめします。
自己分析の詳しい進め方については、以下の記事も参考にしてください。
書類選考:「企業の不安を解消する」表現を意識
書類選考では企業が目を通すことを前提に、読みながら抱えそうな不安を解消することが重要です。表現を調整したり、先回りして情報を盛り込んだりしましょう。
履歴書や職務経歴書では文字を読むだけでなく、「今すぐ何ができるか」「なぜ長く働けるか」も見られます。
スキルや経験を具体的に示すことで、自社とマッチしそうな人材と判断されるでしょう。たとえば、以下のように追記するとより理解しやすくなります。
職務経歴書に「入社後すぐ実行できる業務」を箇条書きで記載する
「Excel中級レベル、データ入力・集計は即日対応可能」
空白期間・転職回数を「一貫したストーリー」として説明する
「自身の特性が整理できておらず試行錯誤を繰り返す期間でした+今回の転職への意向」
書類は「プレゼン資料」です。単に過去の経歴を書きならべるだけでなく、「誰に」「何を」「どうやって」伝えるかも整えると通過率が上がります。
書類選考の詳しい対策については、以下の記事も参考にしてください。
面接対策:「定着」と「再現性」を具体的に示す
面接では、採用者が最も気にする「定着」と「再現性」を具体的に示すことが重要です。
採用者が知りたいのは「この人は長く働いてくれるか?」「転職しても成果を出せるのか?」。すぐ辞めない根拠と、転職しても使える実務能力を詳しく伝えましょう。
それぞれに対して「減点回避(マイナスからゼロ)」「加点(ゼロからプラス)」を意識すると、説得力が上がります。
| タイプ | 面接官の質問 | 回答例(伝える内容) |
|---|---|---|
| 定着・減点回避 | なぜ今回は続けられるのか | 過去の失敗から学んだ工夫を伝える |
| 定着・加点 | どう働きたいのか | 会社への理解とキャリアプランを示す |
| 再現性・減点回避 | ミスを防ぐ工夫 | チェックリスト、メモアプリの活用 |
| 再現性・加点 | 成果を出す仕組み | タスク管理、優先順位の付け方のテンプレ化 |
面接では過去の失敗を隠すのではなく、「失敗から学んだ工夫」を具体的に伝えることが重要です。自己分析で整理した内容も踏まえて、面接官にうまく伝わるような表現を考えましょう。
面接対策の詳しい進め方については、以下の記事も参考にしてください。
不採用が続く場合は転職活動の振り返りも必要
手ごたえを感じられず不採用が続く場合は、活動の進め方そのものを見直すタイミングかもしれません。
条件設定や使っているサービスなど、自分の目的や状況に合っているかを冷静に再確認してください。長期化すると焦りや不安が大きくなるため、違和感を覚えたら一度立ち止まって振り返りましょう。
目安としては20件応募しても書類が通らない場合や、応募開始から3ヶ月経過した時点などがおすすめ。具体的には、以下の2つを見直しましょう。
- 今の自分と求める条件のすり合わせ
- 使っている転職サポートの見直し・変更
今の自分と求める条件のすり合わせ
不採用が続く場合、まず見直すべきは「求める条件が今の自分に合っているか」です。
条件が高すぎると応募できる求人が少なくなり、逆に設定が低すぎると本来の可能性を狭めてしまいます。転職市場の需要も影響するため、以下の3つの視点で今の条件設定を見直しましょう。
年収・職種・勤務地など、条件を欲張りすぎていないか確認しましょう。
たとえば、未経験なのに「即戦力」が求められる職種に応募していたり、年収・勤務地・リモートワークなどすべてを満たそうとして該当求人が極端に少なくなっていたりしないでしょうか。希望職種の求人が少ないのに、職種の幅を広げていないケースもよくあります。
条件に優先順位をつけて、「絶対譲れない条件」と「妥協できる条件」を整理することをおすすめします。
「自分には無理」と決めつけて、本来の可能性を狭めていないかも確認しましょう。
本当はもっと良い条件で働けるのに、「自分には無理」と最初から諦めている人は少なくありません。障害者雇用の事務職に固執して、他の職種の可能性を見ていなかったり、正社員を諦めて契約社員や派遣にしか応募していなかったりするケースもあります。
転職エージェントなどに客観的な意見を聞いてみることで、自分では気づかなかった可能性が見えてくることもあります。
希望条件の求人が実際にどれくらいあるかを確認しましょう。
障害者雇用の求人数は一般枠より少なく、特に地方では選択肢が狭まります。職種の偏りもあり、障害者雇用は事務・軽作業に偏りがち。経験と求人にギャップがあるため、キャリアアップのために一般雇用へ進む方もいます。
市場環境を把握した上で、条件を調整したり、応募先の幅を広げたりすることが重要です。
使っている転職サポートの見直し・変更
今使っているサービスの「種類」が自分の状況に合っているかを見直しましょう。
私たちが転職活動を進める場合、基本的には「転職エージェント」の利用をおすすめします。担当者が一貫してサポートしてくれるため、特性による抜け漏れや視野の偏りに気付きやすいです。
| 枠組み | 求人の傾向 | おすすめな人 |
|---|---|---|
| 障害者向け転職エージェント | 配慮前提、事務・軽作業が多い | 配慮必須、負担が軽くまずは安定を目指す人 |
| 一般向け転職エージェント | 求人の選択肢が広い、幅広い職種・業界に対応 | ある程度自力で対処できる、選択肢を広げたい人 |
転職エージェントには総合型と専門・特化型があるため、それぞれ登録しつつアドバイザーの話を聞いてみると良いでしょう。
一方で転職エージェントを使うと、転職活動を自分のペースで進めにくいデメリットがあります。
- 応募から内定までの進行をアドバイザーが代行する
- 「転職したい」の温度感が低いと置いてけぼり感がある
- 提案される求人が多すぎると焦ってしまう場合がある
伴走型のサポートが忙しい・合わないと感じたら、「スカウトサービス」に切り替えるのも有効です。無理をしすぎると本業にも影響が出るため、転職活動の進み具合に合わせて調整しましょう。
転職サービスを使うときは、類似サービスをいくつか登録してから絞り込むのがおすすめ。求人の質やサポート内容など、サービスによって異なります。1社だけで判断せず、2〜3社併用して比較すると失敗しにくいです。
転職活動に限界を感じたら休む選択肢も持つ
方針を見直しても結果が出ない場合や、活動を続けることが苦しくなってきたと感じたら、一度立ち止まることも選択肢の一つです。
転職は目的に合った企業で定着することが本来のゴール。「活動を続けること」が目的ではありません。
以下のような状態になったら、活動を一時休止することを検討しましょう。
- 応募書類を書くのが面倒で手を付けられない
- 求人票を見るだけで気が重い、惰性で眺めている
- 「転職目的」に合わない求人への応募が増えた
何のために転職活動を始めたのか見失っていると、転職活動だけでなく入社後の満足度も上がりません。
無理に続けても結果が出にくくなるため、場合によっては転職活動から離れてリセットすることも視野に入れてください。
私は転職活動をする場合、必ず「結果が出ても出なくても〇月まで」と決めて動きます。区切りを自分で決めると惰性で動かずに済み、集中して取り組めるのでおすすめです。
まとめ|発達障害者の転職は難しいからこそ戦略的に進める
本記事では発達障害者の転職活動が難しい理由と、行き詰まったときの対処法について紹介しました。
- 転職活動は能力だけでなく「特性とのミスマッチ」も壁になる
- 書類選考や面接の通過率は「伝え方」を意識することが大切
- 結果が出ない場合は条件やサービス選択も見直すことが重要
私たちの転職活動が難しいのは事実です。だからこそ意識して「伝え方」や「戦う場所」を選ぶことが重要になります。
うまくいかないときは自分を責めすぎず、できることから一つずつ試してみてください。まずは自己分析で、自分の特性や転職の目的を整理しなおしてみましょう。






