- 自分に合う資格が見つからない
- 障害特性と資格の相性が分からない
- 資格取得の具体的なメリットが分からない
発達障害のある方が抱える、仕事に対する不安。立場の不安定さや待遇の低さなど、「資格を取れば解決するかも」と考えている方は少なくありません。
資格はあくまで「能力の証明」!それだけで全て安泰とはなりにくい。
結論からお伝えすると、資格があれば仕事が全て順調にいくわけではありません。しかし資格取得がきっかけとなり、仕事に対し前向きに取り組める可能性があります。
本記事では、発達障害のある方にオススメの資格を14種類、系統ごとに分けて紹介します。
- ビジネス系資格
- ITスキル系資格
- 専門職系資格
- その他資格
これから資格を取るメリットや、資格選びに大切な「目的」についても詳しく説明しました。
- 「どんな資格を取ればいいんだろう?」
- 「資格選びに失敗したくない!」
そんな方は本記事を、ぜひ最後までお読みください。
障害者雇用で資格取得が活きる場面
障害者雇用において資格取得は、以下のような場面で効果を発揮します。
- 特性に合わせた適切な業務配置の指針
- 取得した業種に興味関心があることの証明
- 転職活動時のアピールポイントのひとつ
資格は「知識があることの証明」です。合格することで自己効力感を高めることに役立つほか、他者へのアピール材料となるでしょう。
スキルを客観的に評価できるようになり、より自分の強みを活かせる業務へ再配置してもらいやすくなります。
資格を取ることで、関連業務や業界に興味があることの証明にもなります。今後の職場内配置や転職活動において、資格があることが考慮される可能性は高いです。
障害者雇用では、どんな仕事を振ったらいいか迷う企業は多いもの。持っている資格も仕事を渡す参考情報となるため、能力や興味を示す根拠として資格取得はオススメです。
自分に合った資格の選び方3つ
発達障害者が自分に合った資格を選ぶ際、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。
- 目的との整合性
- 特性や得意・不得意の相性
- 興味のある分野
取りやすい資格を手当たり次第取っていくのはNG!
目的との整合性
発達障害者が資格を選ぶときに、最も重要なのは目的との整合性です。
ただ漠然と資格を取るのではなく、なんのために資格を取るのかを考えてから選びましょう。
保有資格は能力を示す強力なツールにもなる一方、関連性のない資格が羅列されていると「手当たり次第に資格を取っている」という印象になります。
まずは自分の興味・関心や将来のキャリアプランを明確にし、有利になるような資格を選ぶことがポイントとなります。
また目的に合った資格を選ぶことで、学習のモチベーションも維持しやすくなります。
「なぜこの資格が必要か」という質問に明確な答えが出せれば、長期間の資格勉強も継続しやすくなるでしょう。
特性や得意・不得意の相性
発達障害の方が資格を選ぶ際は、自身の特性や得意・不得意を考慮することも大切です。資格を仕事に活かすなら、資格だけでなく取得後の実務内容も見据えましょう。
せっかく資格を取っても実務との相性が悪ければ、働きにくい業務と付き合わなければいけません。
- 注意力散漫な人と細かい数字を追いかける経理(簿記)
- 音に敏感な人と大きい音の出る工場職(製造系資格)
一方で、特性が不利になりにくい職種や、かえって強みとなる職種の資格は「働きやすさ」を手に入れるために有効です。
興味のある分野
長期間の資格勉強を乗り越えるために、興味のある分野であることも重要です。興味関心が狭い方や気が散りやすい方にとって、資格や業種に興味が持てなければ勉強も続きません。
- 面白くないからと他のことに飛びつく
- 勉強が続かず試験を受ける前に挫折
社会人が働きながら資格を取るのは、モチベーション管理が非常に大変。好きなことや興味があるジャンルを選ぶことで、つらい学習期間を乗り越えやすくなります。
発達障害者にオススメの資格14選
発達障害者の方にオススメの資格を、4つのカテゴリに分けて紹介します。
- ビジネス系資格
- ITスキル系資格
- 専門職系資格
- その他資格
適切な資格取得は、就職やキャリアアップの武器となります。資格を取って自信をつけたり、将来への投資にしたりと、目的に合わせて取得しましょう。
資格なら何でもよし!ではないよ。
ビジネス系資格
ビジネス系資格は、幅広い職場で使える汎用的なスキルとなります。
特定の職種への強みだけでなく、他職種でも知識を応用可能。多くの企業で求められるスキルを証明できるため、就職や転職で有利になる場合があるでしょう。
お金の扱い方や法律、物事の進め方など、仕事だけでなく私生活にも役立ちます。
- 日商簿記
- ビジネスキャリア検定
- ファイナンシャルプランナー(FP)
- ビジネス実務法務検定試験
ITスキル系資格
ITスキル系の資格は、近年の障害者雇用で大きな武器となります。
事務職系でオフィスツールの熟練度を求められたり、エンジニアやデザイナーなどの専門職求人も見かけるようになりました。
実務を積んで実績を手に入れるため、まずは取っかかりとして資格取得を目指すのは有効です。
- マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)
- ITパスポート
- ウェブデザイン技能検定
専門職系資格
専門職の資格は、安定雇用や強みを作るうえで魅力的な選択肢。
職種としての需要があれば、転職活動時に困りにくくなるでしょう。
専門職は仕事内容が限定されやすいため、特性と業務の相性が良ければ「取ってよかった資格」となる可能性もあります。
- 情報セキュリティマネジメント試験
- CAD利用技術者試験
- フォークリフト運転者
- 介護職員初任者研修
その他資格
一般的な知識を得るための資格取得も、場合によっては有効です。
資格勉強によって自己理解が進んだり、行動の選択肢が広まったりすることもあるでしょう。
働くうえでネックなことや苦手なことを対策するため、体系立てて学習できるメリットもあります。
- 普通自動車免許
- コミュニケーション検定
- メンタルヘルス・マネジメント検定
資格以外に仕事で役立つスキル
資格だけでなく、特定のスキルを磨くこともオススメです。
早いうちに身に付ければ長期的に活躍してくれるため、コスパが非常に良くなります。
- 文章力(ライティング)
- プログラミングスキル
- 英語力(TOEIC)
私は「文章力」がイチオシ!
文章力(ライティング)
文章力は、多くの職種で求められる汎用的なスキルです。
- 日常的なメッセージや文書作成
- 業務マニュアル、会議の議事録
- 転職活動での自己PR訴求力
「誰にでも伝わりやすい書き方」ができれば、口頭のコミュニケーションが苦手な方でも意思疎通しやすくなるのが大きなメリット。
文章力を磨くことで情報を整理する力も向上し、業務内容や上司の指示を理解しやすくなるでしょう。
近年話題の生成AIを使う場合でも、プロンプト(指示)は文章。文章力次第で、AIの生成精度が大きく変わります。またWEB記事やYouTube台本作成といった副業では、文章力が高いほど価値が高まります。
文章力は一生使える「ツブシ」が効くスキルなので、何かひとつ身に付けたい方にオススメです。
プログラミングスキル
プログラミングは障害者雇用でも需要があり、学習を続けることでより専門性を高めていくことが可能な領域。
「デジタル社会の公用語」とも言われ、英語と同様に全世界で共通のスキルです。
- Python:データ分析やAI開発に適している
- JavaScript:Web開発に不可欠
- Ruby:ウェブアプリケーション開発で人気が高い
発達障害がある方のなかでも、集中力が高い方や、こだわりが強いタイプの方に向いている技術。論理的思考力も身に付くため、仕事を効率よく進めていく能力としても役立ちます。
フリーランスとして独立を目指すことも可能なので、一つのスキルを尖らせたい方にオススメです。
英語力(TOEIC)
日本国内で働くとしても、英語を身に付けるのは有効。障害者雇用の求人にも、英語の翻訳や英文の読み書きを任される仕事がありました。
グローバル化が進む現代社会では、英語力は職種を問わず「キャリアの可能性」を広げる武器になるでしょう。より専門性の高い仕事に挑戦する、きっかけとなる場合もあります。
- IT業界
- 貿易業界
- 観光業界
英語力の指標としてTOEICのスコアを参照されるケースがほとんどのため、まずはTOEICのスコアを高めてください。
資格を取るメリット3つ
発達障害者が資格を取得することには、大きく3つのメリットがあります。
職場での活躍やキャリア形成に大きな影響を与えるため、挫折しそうなときは振り返るといいでしょう。
- 自己効力感・GRIT
- 客観的な能力の証明
- タスク・時間管理の能力向上
履歴書の「資格欄」以外にもメリットがある!
自己効力感・GRIT
資格勉強や取得によって、自己効力感とGRITを高めることが可能です。
自己効力感とは、自分の能力への自信のこと。一方、GRITは物事をやり抜く力のことを指します。
資格勉強を進めるなかで、以下のように自己効力感とGRITが向上します。
- 達成感による自己効力感の向上:「私にもできた」という自信
- 努力と結果の関連性の実感:継続学習によるスキル向上の実感
- 次の挑戦への意欲:より上位資格へのチャレンジ意欲や興味
このような好循環によって、資格取得だけに留まらず、仕事や日常生活の充実度も高まります。
職場で新しい仕事を頼まれても、「私ならできる」と前向きにチャレンジできるようになるでしょう。
客観的な能力の証明
資格を取ることで、第三者に向けた「能力の証明」として利用可能です。
資格は特定分野に対する一定の知識や、スキルがあることの証明書。能力があることの裏付けとして、第三者へ提示できます。
- 就職・転職活動時のスキル提示
- 上司が新しい業務を任せる根拠
- 「試しにやらせてみよう」の発生
また難易度の高い資格であれば、継続して努力できる人と認識してもらいやすいです。コツコツと取り組む業務や、粘り強く向き合う業務を任せてもらえる可能性が高まります。
ただし、資格を取ればそれだけで人生をひっくり返せるわけではありません。あくまで実績を作るための、能力の証明として利用しましょう。
タスク・時間管理の能力向上
資格を取るまでの学習期間は、タスク管理や時間管理の能力を身に付ける絶好のチャンス。
社会人が資格勉強をする場合、仕事の合間を使った計画的な取り組みが必要です。学習計画を立ててタスクに分解したり、隙間時間をうまく学習に充てたりする工夫が不可欠になります。
タスク管理や時間管理は働くうえでも重要なスキル。資格勉強をしながら身に付けることで、仕事との向き合い方が変わるでしょう。
資格取得は目的を定めることが重要
発達障害のある方が資格勉強をする場合、思いつきでなく「目的」を定めることが重要です。
なぜ資格を取るのか?なぜこの資格なのか?を考え、より自分にとって効果的な資格取得を目指しましょう。
- 手当たり次第に「取れる資格」を取るのはNG
- 転職を視野に入れるなら「需要」も大事
- 「強み」を活かすことに焦点を当てる
ちゃんと戦略的に考えよう!
手当たり次第に「取れる資格」を取るのはNG
第一に、手当たり次第に「取れる資格」を取るのは避けてください。
「資格を取ること」自体が目的になってしまうと、仕事に活かせない可能性があるでしょう。
- 興味がないけど簡単そうだから
- 仕事と関係ないけど受験費用が安いから
- 第三者にオススメされたから
無計画に資格勉強を進めると、時間やコストが無駄になるリスクもあります。学習時間や受験料、教材費など、資格取得には投資が必要です。
目的や将来のキャリアプランと関連性がない資格は、冷静に判断してから勉強を始めてください。
転職を視野に入れるなら「需要」も大事
転職を見据えた発達障害者にとって、資格選びは「転職市場」の需要も大切。取得しやすさだけでなく、以下のポイントも押さえてください。
- 障害のオープン・クローズ
- 資格に関連する求人の豊富さ
- 人材の需要と供給の比率
例えば人材不足が問題になっている「介護業界」では、未経験者でも入り込みやすいです。しかし障害者雇用に限っては、介護職の求人はあまり見かけません。
障害者雇用の需要だけ見れば、事務職が圧倒的に多いため、MOSや簿記といった関連資格の方が有利に働きます。
もし転職活動の武器として資格を取るなら、ご自身の適性や興味だけでなく「需要」も確認することをオススメします。
「強み」を活かすことに焦点を当てる
資格選びの際は、ご自身の「強み」を活かすことにも焦点を当てましょう。せっかく資格を取るのなら、ご自身の良いところをアピールするために使ってください。
- 得意なことの関連資格を取る
- 資格に関わる仕事を任される
- 得意な範囲だから評価されやすい
- 職場があなたの強みを把握する
- 担当業務に得意なことが増える
「強み」を活かせる資格を取れば、職場があなたの得意なことを理解できます。
効果的な人材の割り振りとして、より強みを活かせる部署へ異動できる可能性もあるでしょう。
資格取得に向けた学習方法
資格勉強をする際、悩みがちなのが学習方法。それぞれ一長一短のため、ご自身の性格や状況に合わせて選択しましょう。
資格の種類や難易度によっては、独学だと取得が難しい場合もあります。
学習方法 | メリット | デメリット | 教材 |
---|---|---|---|
独学 | 自分のペースで勉強できる 費用を安く抑えられる | モチベーション管理が大変 分からない箇所でつまづく | 参考書・問題集 オンライン学習サイト インターネット |
スクール | 専門のサポートが受けられる 体系的に学び理解しやすい | 受講費用がかかる スクールの時間に縛られる | スクール独自教材 講師による個別説明 eラーニングシステム |
障害者支援 | 障害特性への理解がある 自己理解や就職サポートが付く | 離職中が前提のケースが多い 学習できる分野が限られる | 事業所の独自教材 参考書・問題集 市販の学習サイト |
状況や資格によって取り方が変わる!
独学
独学は自分のペースで学習が進められるため、一人でコツコツと勉強をこなせる方にオススメです。
- 参考書や問題集などの書籍
- 月額制のオンライン学習サイト
- YouTubeやインターネット記事
を利用しながら、少しずつ自己学習を進めていきましょう。教材費用を安く抑えられるため、低コストで資格勉強に取り組みたい方が向いています。
一方でモチベーション管理が難しかったり、分からない箇所で挫折したりするデメリットもあります。
- 自己管理能力も鍛えたい
- 時間がかかっても一人で頑張りたい
という方は、独学で資格勉強を試してみてください。
スクール
スクールは専門のサポートを受けながら体系的に学べるため、効率のいい学習環境を求める方にオススメです。
- スクール独自の教材
- 講師による個別説明
- eラーニングシステム
などを活用しながら、最短距離で資格取得を目指せるでしょう。専門家のサポートを受けられるので、分からないことをすぐに質問できる環境が整っています。
体系的なカリキュラムに沿って学習を進められるため、独学では難しい分野でも理解しやすくなります。
「自己管理が苦手」「専門的なアドバイスが欲しい」という方にとっては、スクールでの学習が効果的でしょう。
一方で、受講費用がかかることや、決められたスケジュールに縛られることがデメリット。
- 費用をかけても確実に資格を取得したい
- 決まった時間に集中して学習できる
という方は、スクールでの資格勉強を検討してみてください。
障害者支援
障害者支援は、障害特性への理解がある場で学習できるため、障害者にとって心強い環境です。
これらの支援では、以下の教材を使いながら、個々の特性に合わせたサポートを受けられます。
- 事業所の独自教材
- 一般的な参考書・問題集
- 市販の学習サイト
障害特性を理解したスタッフのサポートがあるため、自分のペースで学習を進められます。多くの場合は就職サポートも付いており、資格と合わせて就職後のケアも受けられることが大きなメリットです。
一方で、離職中の方が対象のケースがほとんど。働きながら資格取得を目指す方には、マッチしません。また訓練内容や、資格の種類が限られる場合があるというデメリットもあります。
- 自分の障害特性に合わせた学習環境が欲しい
- 資格取得から就職までトータルサポートしてほしい
という方は、それぞれの相談窓口に問い合わせてみましょう。
まとめ|資格取得は目的を明確にしよう
本記事では資格取得を考えている発達障害の方に向けて、オススメの資格をまとめて紹介しました。
資格を取るには、お金も時間もかかります。「ただ何となく」「資格さえあれば逆転できる」と飛びつくのではなく、目的意識をもって時間もお金も投資しましょう。
資格取得と合わせて転職も考えている方は、転職エージェントなどを使い「転職市場での需要」も確認してください。