メールやLINEひとつで仕事を辞められる「退職代行」。職場と連絡を取らずに退職できるメリットがある一方で、退職代行を使ったあとを想像して二の足を踏んでしまう人は多いです。

良い・悪いでなく、選択肢として頭に入れておくのが大事!




本記事では発達障害がある方が仕事を辞める際のトラブルや、退職代行を使ってでも辞める判断基準を紹介します。
しかし「限界を通り過ぎた」と感じている方や、不当な扱いで危険な状態の方は、今すぐ脱出するのもひとつの手。
見切りをつけてストレスの原因からすぐに離れれば、それだけ軌道修正も早くなります。
障害の開示・非開示と関係なく、ひどい職場では発達障害がある人が標的になるケースは多いです。まずはご自身の状況と見比べながら、ぜひ最後までお読みください。
退職代行は発達障害・グレーゾーンの「最終手段」


退職代行は私たちの代わりに、職場へ退職の意思を伝えてくれるサービス。発達障害やグレーゾーンの私たちにとっても、自分を守る最後の切り札として使えます。
退職代行サービスは、退職したい従業員本人が、代行サービス会社に料金を支払い、退職意向を伝えてもらう仕組みです。わざわざお金を払ってでも退職したいという行動の背景には、「上司からハラスメントを受けていて直接言い出せない」「すぐにでも退職したいが執拗(しつよう)な引き留めに合う」などといった事情が考えられます。さまざまな理由で、若い世代を中心に需要が広がっているのが退職代行サービスです。
引用:日本の人事部
たとえば、転職が決まってから「障害者雇用率が定員に満たない」「代わりの人員がいない」などで引き止められるケースや、障害があることを理由に「配慮も相談も受け付けない」「雑用を山ほど押し付ける」などの圧力がかかるケースもあります。
私自身、過去にはパワハラ当たり前な職場や、障害者雇用でも何も対応してくれないような職場で働いた経験があります。当時は退職代行というサービス自体が広がっておらず、今思えば「この時に使えれば…」と感じました。
メンタルをすり減らしながら、それでも辞められない人にとっては逃げる手段となるでしょう。
一方で退職代行を使うと、場合によっては社会復帰が遅れてしまう可能性もあります。



安易に使いすぎると、逆に自分を追い詰めることも!
使える手段や対策がない場合、退職代行を「最終手段」として使うのは悪いことではありません。万策尽きたときは、ためらわず利用しましょう。
自分の身を守れるのは、自分自身です。退職代行は、良い面・悪い面もしっかり把握したうえで、どうしても避難が必要なときだけ使うことをおすすめします。
発達障害者が退職代行を使う判断基準3つ


発達障害がある方や、グレーゾーンの方が退職代行を使う基準は、大きく分けて以下の3つです。
- ハラスメントや障害への不当な扱いがある場合
- 退職交渉が難しく頼れる障害者支援もない場合
- 休職中で、会社に退職を伝えるのが苦痛な場合
もちろん「社会人なら自分で対応するのが当たり前」という考えは分かります。しかしそれでも、どうしても難しいケースはあります。
発達障害がある私たちは、メンタル不調などの二次障害が起きやすいです。なかには職場への連絡ひとつで、体調が悪化してしまう状態の人もいるでしょう。
退職の意思は固まっているのに、最後の一歩が踏み出せないなら、「退職代行」は有効です。



正直なところ「きれいごと」だけじゃないよね。
ハラスメントや障害への不当な扱いがある場合
ハラスメントや障害に対して不当な扱いを受けている場合、退職代行を選択肢のひとつに入れましょう。
安全でない職場で、冷静に一人で退職の話を進めるのは難しいです。言いくるめられて退職できない可能性や、有給消化などの正当な権利を受け取れないリスクもあります。
たとえば「障害者はただ座らせておけばいい」というような職場では、一人だと話し合いのテーブルに着くことすら難しいです。反対に業務を大量に押し付けるような職場でも、対等な話し合いは厳しいでしょう。
2024年から改正障害者差別解消法が施行され、企業には「合理的配慮」の提供が義務化されました。
しかし、それでも見えないハラスメントは未だにあります。すべての職場・社員が法令を守っているとは限りません。
共生社会を実現するための取組を推進するため、事業者に対し「合理的配慮」の提供を義務付けることなどを内容とする「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律」(「改正障害者差別解消法」)が、令和6年4月1日に施行されました。
引用:内閣府
心身の危険を感じたり、手助けが入る前に心が折れそうだと感じたりした場合は、退職代行で離れるのは「逃げでなく賢明な判断」です。
退職交渉が難しく頼れる障害者支援もない場合
退職の意思を伝えても話が進まない、社内外に頼れる人もいない。これも、退職代行を考える十分な理由です。
そもそも退職の交渉は、自分の意思を率直に伝えたり、予期せぬ引き止めに反論したりと、発達障害がある私たちにとって「苦手」が詰まったイベントです。
「今辞められたら困る」と強い口調で言われた瞬間、頭が真っ白になって「はい…」としか言えなくなる。誰かに相談したくても、そもそも「誰に」「何を」話せばいいかすら分からない。このような状況で、辞めたくても辞められない人もいます。
特に転職先が決まっている場合、退職時期を固めてから入社日を相談するケースもあります。退職の相談が進まなければ、せっかく決まった内定が流れてしまうリスクもあるでしょう。
クローズ就労で障害者支援の介入が難しい人や、グレーゾーンで「支援とのつながり」がない人もいます。
支援者がおらず孤立した状態が続けば、心をすり減らす危険もあります。退職代行は、「辞めたくても辞められない」状態の人にも有効なサービスです。
休職中で、会社に退職を伝えるのが苦痛な場合
休職に追い込まれた原因が職場にある場合、退職を伝えるための連絡自体が大きなストレスになります。
既に復帰の意思がなく、「会社からの着信で動悸がする」「メールを開くのが怖い」といった接触が苦痛な状況なら、退職代行を検討しても良いでしょう。
そもそも心身が限界だから休職しているのに、その原因である職場へ、さらに負担の大きい退職の連絡をするのは大変な作業。かといってズルズルと先延ばしにしてしまうと、その後の社会復帰が遠のく可能性があります。
休職からの退職は、傷病手当金や失業保険の手続きが複雑に絡みやすいケース。専門知識がないまま進めると、金銭的に損をしてしまうリスクも考えられます。
体調の回復を最優先すべき時期に、無理は禁物。手続きは専門家に任せ、自分は復帰への準備を進めるのもひとつの方法です。
【重要】退職代行を使うリスクやデメリット


退職代行は便利そうに聞こえるサービスですが、良い面ばかりではありません。主なリスクやデメリットは、利用する前に必ず把握してください。
- 業者選びを間違えるとトラブルが起きる
- 円満退社が難しくなり、職場との関係が悪化する
- 安易な退職を繰り返し、キャリア形成の機会を失う
「もう限界、デメリットなんて気にしない!」と感じるかもしれません。私も転職を繰り返した経験があるので、その気持ちは痛いほど分かります。
とはいえ勢いで利用してしまい、後から「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースは少なくないです。衝動的な行動をしてしまう方は特に、追い詰められてしまう可能性もあります。
後悔しない選択をするためにも、まずはデメリットをしっかり把握してください。



考えなしに使うのは危険!
業者選びを間違えるとトラブルが起きる
退職代行で最も怖いのが、目的と合っていない業者を選んでしまうこと。退職自体はできても、本来得られるはずだった有給消化や未払いの残業代が手元に残らない場合があります。
- 退職日の調整ができなかった
- 有給休暇を消化させてもらえなかった
- 未払いの給与や退職金を受け取れなかった
退職代行は運営元によって、法的に認められている業務範囲が異なります。退職の意思を伝える「使者」の業者と、有給消化などの「交渉」ができる業者に分かれます。
退職に残業代の支払いなどの「交渉」を含めたい場合は、運営元が労働組合か弁護士法人のサービスを選ぶこと。単に退職を伝えるだけなら、安価で済む民間企業も有効です。万が一の際に「話が違う」と困らないためにも、運営元は必ず確認しましょう。
円満退社が難しくなり、職場との関係が悪化する
退職代行を使うことで、職場との関係はほぼ確実に悪化します。職場との関係は自分を守るための「トレードオフ」として、受け入れる必要があるデメリットです。
退職代行は、いわば人間関係を強制的にリセットするサービス。会社側から見れば、「話し合いを拒否された」という一方的な印象になりがちです。
たとえ良くしてくれた同僚がいたとしても、引き継ぎ不足で結果的に迷惑をかけてしまう可能性はあります。しかし、退職代行を視野に入れるほど、追い詰められていたのが現実です。
場合によっては、綺麗に辞められなかったと自分を責めてしまうかもしれません。だからこそ退職代行を使うのは、「最終手段」にした方が良いでしょう。
安易な退職を繰り返し、キャリア形成の機会を失う
退職代行で気を付けなければいけないのは、手軽さから頼ってしまいがちになることです。依存してしまい、長期的なキャリア形成の機会を失う可能性もあるでしょう。
退職代行が「癖」になってしまうと、環境を変えることで解決できたはずの問題や、自分自身の課題と向き合う機会を失ってしまう可能性があります。
- 自己分析して特性への対処法を見つける
- 適切な支援に頼って解決につなげる
- 「苦手」を伝えて仕事の進め方を工夫する
「この仕事も合わないから、また退職代行で辞めればいいや」という考えが続くと、自身の課題と向き合うことなく転職を繰り返します。
結果としてどの職場でも長続きせず、スキルも身につかない、という「負のスパイラル」に陥ることもあるでしょう。
もちろん、心身に影響が出るほどの環境は避けた方が良いです。退職代行は、心身を守るために避難する手段となります。
自分の成長の機会を失わないためにも、退職代行を使うかどうかは慎重に判断してください。
【重要】今すぐ退職代行を使うメリット


退職代行にはリスクやデメリットもありますが、状況によっては大きなメリットもあります。特に心身が限界な状況にいる人にとっては、有効な選択肢のひとつです。
- 明日から会社に行かずに、即日で退職できる
- 職場や上司とのやりとりをせずに辞められる
- 必要な書類請求や有休消化の手続きを代行できる
発達障害のある人のなかには、「退職を伝える」という行為そのものが、二次障害を引き起こしかねないほど高い壁になる場合があります。
職場や上司などの印象を深読みしすぎて、かえって八方塞がりになる人も。自分を追い詰めてしまう前に、退職代行にもメリットがあることを知っておきましょう。



自分を守る選択肢として頭にいれておこう!
明日から会社に行かずに、即日で退職できる
退職代行の最大のメリットはスピード感。退職代行に依頼すれば、依頼したその日から出社する必要がなくなります。
心身が本当に限界のときは、退職を伝えて承認、手続き…と受理されるまでの数日すら負担が大きいです。ストレスの原因から物理的に離れられれば、少しでも心や体への負担も軽くできます。
どうしても限界を超えてしまった場合は、身を守るための逃げの一手として利用しましょう。
職場や上司とのやりとりをせずに辞められる
上司や同僚と一切顔を合わせず、負担の強いコミュニケーションをすべて避けられるのも、退職代行の大きなポイントです。
「退職を切り出す」という行為は、ただでさえ大きなストレス。発達障害のある人のなかには、一般の人よりもプレッシャーに感じる場合もあります。引き止めや”詰め”が怖くなり、退職そのものを諦めてしまう人も少なくありません。
退職代行に依頼すれば、精神的な負担がかかる直接のやりとりは無くなります。
退職代行が必要な連絡をすべて代わってくれるため、郵送で事務処理をするだけ。第三者が間に入るからこそ、事務的に手続きが進めやすくなります。
必要な書類請求や有休消化の手続きを代行できる
退職代行は、ただ辞める意思を伝えるだけでなく、「有給休暇をすべて消化したい」「離職票を確実に発行してほしい」といった、言い出しにくい権利の主張も代行してくれます。
心身が弱っているときは、会社に対して権利を主張するエネルギーは残っていないもの。泣き寝入りしてしまい、金銭的に損をしてしまう人も少なくありません。
たとえば有給休暇の取得は労働者の正当な権利。しかし、退職時の有休消化を拒否するような会社も、残念ながら存在します。真正面から会社とぶつかる難しいケースでも、交渉権のある労働組合や弁護士が運営する退職代行であれば、法律に基づいて堂々と交渉してくれます。
難しい交渉や手続きはプロに任せて、私たちは回復と次の準備に集中しましょう。「離職票がなかなか届かない」といった退職後のトラブルにも対応してくれる業者もあるため、最後まで安心して任せられます。
退職代行より先に必要な対策・相談先


退職代行は、あくまで最終手段。その前に試せる対策や、頼れる相談先がないか、一度立ち止まって考えることが大切です。
「そんなものは、もうとっくに試したよ」「ただのきれいごとか…」と思う方がいるかもしれません。相談したのに何も変わらなかった、というケースもあります。
それでも勢いで辞める前に振り返り、使えるサポートがないか確認してみてください。
医療機関
心身の消耗を感じている方の場合は、一度専門医に相談してみることをおすすめします。
自分では「甘えかな」「考えすぎかな」と思っていても、客観的に見れば休んだ方がいいケースは少なくありません。医師の診断は自分の状況を正しく認識し、会社や公的機関に説明するための「客観的な証拠」になります。
医師が作成した診断書があれば、退職時に「自己都合」ではなく「やむを得ない理由のある特定理由離職者」として扱われ、失業保険の給付が早まる可能性があります。失業保険のタイミングは、辞めた後の生活を守る上で非常に大きなポイントです。
特定理由離職者とは、期間の定めがある労働契約が更新されなかった場合や妊娠・出産・育児・介護、体力の低下や心身の疾病などで離職せざるを得ない状況になってしまった人です。
引用:退職コンシェルジュ
もし傷病手当金を受給できるのであれば、失業保険の給付と組み合わせてある程度の生活基盤を確保できます。
特に「就労移行支援」などの障害者支援を使って社会復帰を目指す場合、目先の生活費の確保は重要です。公的な給付や保障が受けられるかは、必ずチェックしてください。
社内の相談窓口
会社の規模や体制にもよりますが、社内の相談窓口が解決につながることもあります。
- 人事部・労務部
- 労働組合
- コンプライアンス窓口 など
従業員の労働環境を調整する権限を持っているため、異動や配置変更などで対処できる場合もあるでしょう。
人事部に相談することで、特性に合わせた異動や業務調整を検討してもらえる可能性があります。ハラスメントが原因であれば、ハラスメントの相談窓口が調査に動いてくれるかもしれません。
ハラスメント相談窓口とは、ハラスメントに関する従業員からの相談に対応する窓口のことです。現在は全ての企業に設置が義務付けられています。
引用:Smart相談室
もちろん、社内の相談窓口で絶対に解決するとは限りません。相談したにも関わらず、状況が改善しないケースも残念ながら存在します。しかし、「社内の然るべき部署に相談したが、対応してもらえなかった」という事実は、その後に退職代行や外部機関を頼る際の、正当な理由にもなります。
障害者向けの支援機関
「障害者向けの支援機関」に相談してみるのも一つの手です。支援機関の職員は、多くの障害がある人を支援し、発達障害者が職場でつまづきやすいポイントを把握しています。
支援機関に現状を話しつつ、「辞める」以外の解決策がないか一緒に考えることも重要です。
たとえば「発達障害者支援センター」や「障害者就業・生活支援センター」といった支援機関があります。混乱した思考の整理を手助けし、発達障害特有の悩み解決をサポートしてもらえるでしょう。障害者手帳のないグレーゾーンの方でも、相談に乗ってもらえる場合が多いです。
まだ障害者支援とのつながりがない方は、一度地域の支援機関を探して相談することをおすすめします。
失敗しない退職代行の選び方


もし退職代行を使うのであれば、必ず以下のポイント3つを押さえてください。
- 法的な交渉が可能な運営元か
- 料金体系や支払い方法が分かりやすいか
- 連絡方法や退職後のサポートが自分に合っているか
退職代行は運営元によって、法的な対応範囲やサービス内容が大きく異なります。ご自身の状況や希望に合わない業者を選ぶと、思わぬトラブルにつながる場合もあるでしょう。
「退職代行なんてどこも一緒だ」と考えず、比較したうえで使うことをおすすめします。
法的な交渉が可能な運営元か
退職代行を選ぶ上で最も重要なのが、運営元を確認すること。退職代行の運営元は、大きく分けて以下の3つになります。
運営元 | できること(業務範囲) | こんな人におすすめ |
---|---|---|
民間企業 | 退職意思の伝達(使者) | 職場とのトラブルがなく、ただ退職を伝えてほしいだけの人 |
労働組合 | 退職意思の伝達 交渉(有給消化・退職日など) | 有給消化や退職日の調整など、交渉してほしいことがある人 |
弁護士法人 | 退職意思の伝達 交渉 法的紛争の対応(損害賠償請求など) | 未払い賃金やハラスメントの慰謝料請求など、法的なトラブルを抱えている人 |
退職代行は運営元によって、法律で認められている業務範囲が全く異なり、特に「交渉」の可否に影響します。もし損害賠償請求などの「法的紛争」のリスクがある場合は、弁護士法人でなければ対応できません。
有給休暇の消化や退職日の調整など、会社との「交渉」が必要な場合は、運営元が「労働組合」か「弁護士法人」のサービスを選びましょう。交渉権のある業者に依頼することで、あなたが本来持つ権利を主張し、泣き寝入りすることを防げます。
料金相場は、民間企業・労働組合が2~3万円台、弁護士法人は5万円以上が目安。サービス利用時は「交渉」の有無と料金のバランスを考え、ご自身の状況に合った運営元を選ぶことが大切です。
料金体系や支払い方法が分かりやすいか
各サービスの料金体系や支払い方法も、事前に確認しましょう。具体的には、以下4つをチェックしてください。
項目 | 見るポイント | 解説 |
---|---|---|
料金相場 | 相場と大きな差がないか | 民間企業・労働組合は2~3万円台、弁護士法人は5万円以上が目安 |
追加料金 | どんなときに追加料金が発生するか | 業者によっては、有給消化の交渉などで別途費用がかかる場合あり |
返金保証 | 退職できなかった場合に返金されるか | 特に初めて利用する方には「全額返金保証」があると安心 |
支払い方法 | 自分の使える支払い方法があるか | クレジットカードや後払い、キャッシュレス決済など普段使う決済方法のチェック |
相場より極端に安い業者は、サポートが不十分だったり、後から高額な追加料金を請求してきたりする危険性があります。逆に高すぎる場合も、サービス内容に見合っているか慎重な判断が必要です。
追加料金が発生しやすいのは、退職の意思を伝える以上の「交渉」が必要になったとき。たとえば民間企業に依頼した後に、有給消化や未払い賃金の交渉が必要になると、提携する労働組合や弁護士への依頼費用が発生するケースが考えられます。
私たちのなかには、お金の管理や複雑な契約を苦手とすることも少なくありません。だからこそ、無料相談で「追加料金が発生しないか」「万が一の場合は返金されるか」などを確認し、不安が残る業者は避けることをおすすめします。
連絡方法や退職後のサポートが自分に合っているか
退職代行との連絡方法や退職後のサポート体制が、ご自身の特性や状況に合っているかも確認ポイントです。
- LINEやメールで完結する連絡体制
- 24時間対応の相談窓口
- 退職後のトラブル対応
- 退職後の転職支援サービス
特性によって電話でのやりとりが苦手な方は、LINE・メールで手続きが完結するサービスを選ぶと負担を減らせます 。24時間対応の業者であれば、時間を気にせず夜中でも相談できるでしょう 。
業者によっては「離職票が届かない」といった、退職後のトラブルへのアフターフォローも提供しています 。単に「退職の意思」を伝えるだけでなく、退職前後のさまざまな状況に対応してもらえるサービスは安心感が得られます。
最後まで安心して任せられるかどうかも、業者選びの大切な基準です。
信頼できるおすすめの退職代行


民間企業・労働組合・弁護士法人が運営元の、信頼できる退職代行をそれぞれ紹介します。
退職代行へ依頼したい内容によって、使う退職代行が異なります。ご自身の目的に合ったサービスを選び、後悔のない依頼をしましょう。
民間企業の退職代行
特におすすめ!


「退職代行jobs」は株式会社アレスが運営する、民間企業の退職代行です。
安心パックプランに加入すれば、有給消化や退職日調整などの「交渉」も可能。退職後の転職支援や引っ越しサポートも充実しており、料金の後払いに対応している点も大きな特徴です。
民間企業の退職代行を選ぶ際は、以下のポイントをチェックしてください。
- 交渉が必要になった場合の「連携体制」は明確か
- 万が一退職に失敗した際の「返金保証」はあるか
- サービスへの相談実績は十分にあるか
民間企業が運営する退職代行は、あくまで退職の意思を伝える「使者」の役割に徹します。そのため、料金が比較的安価なのが最大のメリットです。
「職場とトラブルはなく、ただ退職を切り出すのが精神的に難しい」という人なら、民間企業の退職代行がおすすめです。
もし、有給休暇の消化や退職日の調整といった「交渉」が必要な場合は、労働組合か弁護士法人が運営する退職代行を選びましょう。
サービス名 | ![]() ![]() 退職代行Jobs | ![]() ![]() 退職代行モームリ | ![]() ![]() 退職代行ニコイチ |
---|---|---|---|
料金 | 24,500円 ~26,500円 | 12,000円 ~22,000円 | 27,000円 |
返金保証 | あり | あり | あり |
退職成功率 | 100% | 100% | 100% |
対応時間 | 24時間 | 24時間 | 7:00~23:30 |
無料相談 | あり | あり | あり |
連絡方法 | LINE・メール・電話 | LINE・メール・電話 | LINE |
交渉 | オプションで可能 | 不可 | 不可 |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
労働組合の退職代行
特におすすめ!


「退職代行ガーディアン」は東京労働経済組合が運営する、労働組合の退職代行です。
業界最安値レベルの料金ながら、労働組合として有給消化などの交渉が可能。東京都労働委員会に認証されており、安心して任せられる点が特徴です。
労働組合の退職代行を選ぶ際は、特に以下のポイントをチェックしてください。
- 公的な認証を受けた、信頼できる労働組合か
- どこまでの交渉事に対応してくれるか
- 料金に対して提供されるサポート内容が妥当か
労働組合が運営する退職代行は、憲法で保障された「団体交渉権」を持っているのが最大の特徴です。これにより、会社側は正当な理由なく交渉を拒否できず、あなたが泣き寝入りするのを防ぎます。
「未消化の有給がある」「退職日を調整したい」など、会社との「交渉」が必要な人なら、労働組合の退職代行がおすすめです。
もし、ハラスメントの慰謝料請求や、会社から訴えられるといった法的な紛争に発展しそうな場合は、弁護士法人の退職代行を選びましょう。
サービス名 | ![]() ![]() 退職代行ガーディアン | ![]() ![]() 退職代行トリケシ | ![]() ![]() リーガルジャパン |
---|---|---|---|
料金 | 19800円 | 19800円 | 19800円 |
返金保証 | 記載なし | あり | あり |
退職成功率 | 100% | 100% | 100% |
対応時間 | 24時間 | 24時間 | 24時間 |
無料相談 | あり | あり | あり |
連絡方法 | LINE・電話 | LINE | LINE |
交渉 | 可能 | 可能 | 可能 |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
弁護士法人の退職代行
特におすすめ!


「退職110番」は弁護士法人あおばが運営する、弁護士法人の退職代行です。
労働問題に強い弁護士が直接対応するため、未払いの残業代や慰謝料請求といった法的トラブルまで安心して任せられます。料金は一律43,800円で、万が一退職できなくても全額返金保証が付いている点も特徴です。
弁護士法人の退職代行を選ぶ際は、特に以下のポイントをチェックしてください。
- 労働問題の実績や専門性がある弁護士か
- 料金体系が明瞭で予算に合っているか
- 対応体制や法的サポートの範囲が自分に合うか
弁護士法人が運営する退職代行は、退職に関するあらゆる「法的紛争」に対応できる、唯一の選択肢です。あなたの「代理人」として、すべての交渉や法的手続きを行います。
「未払いの残業代や退職金を請求したい」「ハラスメントで慰謝料を請求したい」など、会社と法的に争う可能性がある場合は、少し費用が高くても弁護士法人の退職代行を検討してください。
単に退職を伝えたいだけなら民間企業、有給消化などの交渉までなら労働組合の退職代行で十分なケースが多いです。
公務員や会社役員などの方は、弁護士法人による退職代行しか利用できません。ご自身の状況に合わせて、必要な場合のみ弁護士法人の退職代行を利用しましょう。
サービス名 | ![]() ![]() 退職110番 (弁護士法人あおば) | ![]() ![]() 弁護士法人みやび | ![]() ![]() 弁護士法人ガイア |
---|---|---|---|
料金 | 43,800円 | 27,500円 〜77,000円 | 25,300円 ~77,000円 |
返金保証 | あり | 記載なし | 記載なし |
退職成功率 | 100% | 100% | 100% |
対応時間 | 24時間受付 | 24時間受付 | 24時間受付 |
無料相談 | 記載なし | あり | あり |
連絡方法 | メール(フォーム入力) | LINE・メール | LINE・メール・電話 |
交渉 | 請求・訴訟 | 請求・訴訟 | 請求・訴訟 |
公式サイト | 公式サイト | 公式サイト | 公式サイト |
退職代行を使った後の注意点


退職代行を使ったとしても、その場ですべての手続きが完了するわけではありません。会社との事務的な処理や退職後の手続きなど、自分で対応すべきことが残っています。
- 書類や貸与品返却などの事務処理
- 失業保険・公的支援の申請手続き
- 再就職に向けた準備と体調のケア
退職後には会社への書類送付だけでなく、給付金の手続きや社会復帰への準備などが控えています。なかにはすぐに就職が難しく、障害者支援を経由した方が良いケースもあるでしょう。
まずは体調を安定させつつ、ひとつずつ処理していくことをおすすめします。



「辞めること」も大事だけど、それ以上に「辞めたあと」も大事!
書類や貸与品返却などの事務処理
退職代行を使って辞めたあとでも、書類のやりとりや貸与物・私物の郵送などの事務処理は発生します。
とはいえ、基本的なやりとりは退職代行が行うので、私たちは「書類や荷物の受け取り・発送」だけ対応すればOK。トラブルにならないよう、最低限の事務処理だけは対応しましょう。
職場へ送るもの | 職場から受け取るもの |
---|---|
健康保険証 記入した退職届 社員証や名刺 PCや制服などの貸与品 ほか | 未記入の退職届 離職票 源泉徴収票 保険・年金関係の書類 ほか |
もし会社が離職票の発行を拒むなどのトラブルがあった場合は、退職代行やハローワークなどに相談してください。
失業保険・公的支援の申請手続き
退職後の生活を支える、失業保険などの公的支援は必ず利用しましょう。いくつか知っておくべきポイントを紹介します。
発達障害で障害者手帳を持っていると、失業保険の給付期間が長くなる「就職困難者」に認定されます。やむを得ない理由で退職した場合も「特定理由離職者」と認定され、給付までの待機期間がなくなることがあります。(参考:ハローワーク)
一定の要件を満たせば、退職後も健康保険の傷病手当金を受給できます。一方で傷病手当金と失業保険を同時に受け取ることはできません。病気やケガで働けない間は傷病手当金を受給し、働ける状態になってから失業保険に切り替えるのが基本的な流れです。(参考:退職コンシェルジュ)
障害者雇用の契約社員やアルバイトといった非正規雇用でも、条件を満たせば失業保険を受給できます。受給には、原則として「離職前の2年間に12ヶ月以上」の雇用保険加入期間が必要ですが、障害者手帳があるなど「就職困難者」に該当する場合、この条件が「離職前の1年間に6ヶ月以上」に緩和されます。(参考:厚生労働省)
再就職に向けた準備と体調のケア
退職後の手続きが落ち着くと、「すぐに次の仕事を探さなければ」と焦るかもしれません。もちろん次のキャリアも大切ですが、同じくらい体調をケアすることも大切です。
発達障害がある人にとって、就職や定着のハードルは一般の人よりも高いもの。特性や傾向をしっかり見つめ直し、より働きやすい環境を作ることにも目を向けましょう。
もし次の就職への不安が強い場合は、失業保険などを受け取っているうちに「就労移行支援」へ相談するのがおすすめです。前職でつまづいた点を振り返り、次の職場に向けた対策を立てるために活用しましょう。
退職が終わると、急に再就職へ焦ってしまう人は多いです。私自身も退職と再就職を繰り返し、泥沼にはまった経験もあります。
次の職場でより良い環境を作るため、一呼吸置いてから転職活動に取り組むことをおすすめします。
まとめ|退職代行は「最終手段」として残しておこう
本記事では、発達障害のある方が退職代行を「最終手段」として賢く使うための判断基準や、注意点について解説しました。
- 退職代行は追い詰められた状況から避難する「最終手段」
- 利用前に医療機関や支援機関などの相談先に頼るのも大事
- もし利用すると決めたら、後悔しないよう信頼できる業者を選ぶ
退職代行は気軽に使ってしまうと、その後の働き方にも大きく影響する可能性があります。場合によっては、次々に退職代行で辞めていく「負のスパイラル」に陥ってしまうかもしれません。
一方であなたが本当に危険な状態なら、ためらわず「最終手段」として使うことも大切です。
発達障害の私たちは、社会で強く立ち回るのが難しいケースが多いもの。一人で抱え込んで八方塞がりになる前に、支援機関やコミュニティなどでサポートを受けることも視野に入れてください。